横芝の反撃-7
謙也はすぐさま違う男に電話をかける。相手は名和慎二と言う男だった。
「あの女はまだ見つからないのか?」
ある女とは佐川明子の事である。謙也は名和を使い明子の行方を追っていた。
「いや、まだです。」
その答えに苛立ちを隠せずに舌打ちをする。
「あの女、って言うかあの山口の野郎、一体どこに隠れていやがるんだ!」
一刻も早く明子を取り戻したい謙也。だがそれは自分が手塩にかけて市長にまで昇らせてやった弟子を心配するような様子ではなかった。
「あの女…、色々知恵や権力を与えてやって市長になれたって言うのに!恩を仇で返しやがって!!」
始めは明子が駅前で全裸張り付けに遭った時、もしかしたら自分が教えた知恵が誰かの反感を買い戒めを受けたのだと思った。まぁ誰かは目星はついていたが。その責任は少しとは言え感じた謙也は警察から解放され次第匿おうと思った。だがその身柄を誰か…、山口元治に奪われ、早く山口から助け出してやらなければならないと躍起になって行方を追った。しかしその間、ある事実が明らかになった。それは明子の謀反だった。街のビッツコイン化で得た裏金…いや裏ビッツコインを全て横領していた事実を知った。それどころか謙也が預けていた裏金を全て海外の銀行に送金されていた。そして表に出てはいけないブツ、違法薬物も姿を消していたのであった。それらは全て全裸張り付けに遭う直前に行われており、調べによるとどうやら小渕愛子と手を組んで行っていたらしい事を突き止めた。仲が悪いとされていた明子と愛子だったが、頻繁にお互いのマンションを行き来していた情報もあり、そこでようやく気がついたのであった。明子に欺かれた、と。そしてどうやら山口元治が明子と繋がっているようだとの情報から、山口を拘束しようとして山口不動産を襲撃した。そこに明子が現れ元治とともに消え去った事が判明すると、謙也は確信した。3人はグルで明子は元治らと行動を共にしている、と。謙也は名和を使い総勢100人体制で山口らの行方を追っている。
「金はいい。どうせ旧紙幣から新紙幣に形を変えた横芝の金だからな。だがあっちはマズイ。世間に知れたら全て終わりだ。特にあの女には知られてはいけない。なんせあの田口徹の隠し遺産だからな。それを俺が持っていたとバレてはマズイ。本気になって捜査すんだろうからな。そうなったら、どちらかだ。何が何でも明子から取り戻すか、上原若菜を消すか、だ。」
謙也の目から鋭い眼光が放たれた。
横芝の金とは、元々横芝の社員にボーナスとして配られるはずだった金を指す。すなわち3億円強奪事件で得た金だ。そして田口徹の隠し遺産とは違法薬物の事だ。謙也は直接的には繋がりはなかったが、サーガこと佐川健吾のみならず間接的に田口徹と繋がりがあるのであった。西進不動産を通して…。