横芝の反撃-6
横芝はスマホをリモコン代わりに操れる独自のアプリを開発した。家電全てを横芝で揃えれば家の中にいなくても家電を自由に操れるアプリだ。特に冷蔵庫は今度の家電ショーで発表される予定だが、ネット機能付、商品を冷蔵庫の中にしまうだけで在庫管理から日付管理、冷蔵庫の中にある商品を組み合わせてどんな料理を作るのが可能か、また何を足せばこんな料理が出来る、そんなAI機能を備えたハイテク冷蔵庫が世間の注目を集めている。
元々、コスト削減で製造工場を海外に構えた目立に対して横芝は国内製造に拘って来た。その評価と実績を積んできたのが高性能テレビのラグザだ。レコーダーとの連動でラグザリンクと言うネットワークを構築し、録画機能操作が飛躍的に簡単になり、特に高齢者のように機器の扱いが苦手な層から圧倒的な支持を得て来た。現在の国民の年齢層をよく分析し、今の世間の流行ではなくニーズを徹底的に調査し商品作りに邁進して来た。その結果が横芝の評価を高めてきた。
一方目立は若者向けの商品開発ばかりに注目し商品を作って来た。どの企業もテレビにYouTubeをつけたり、パソコン代わり動画を楽しむ機能は装備しているが、それをリードして来たのが目立だ。他の企業も後に続いて商品開発をしているが、その一歩前を歩くのが目立。だが今、パソコンを操れない世代のニーズを軽んじて来たツケが回って来たようだ。当初はパソコンなど家電の扱いに慣れた人らが高齢者になると考え操作性の簡素化など考えてもいなかったが、どうやら歳を取るにつれ今まで出来たことが出来ない、普通にしていた事が面倒、おいつけないと言ったような考えを持つようになると言う現実が現れた。目立の目論見は外れ、目立は今の世間のニーズに答えられない企業として業績を落としていた。そんな状況の中、警察関連設備のシェアまでも落とし、目立は創業以来最大の売り上げ低迷に陥ろうとしていた。
「おい、来週末から始まる家電ショー、横芝の話題で盛り上がってるじゃないか!!」
高嶋謙也は目立の現社長、戸川理人に電話をしていた。
「目立も最新かつ高性能の電子レンジで…」
「電子レンジ…?弱いだろ!?バカにしてんのか!!」
「も、申し訳ございません!」
怒りが収まらない謙也。頭に血が昇り怒りの頂点に達した。
「売り上げ最悪、警察のシェアは奪われる…、家電ショーは横芝の一人勝ち…。冷蔵庫の話題がメディアで騒がれて横芝の名前が全国に響き渡る…。あり得ないだろ!あと一歩で横芝をブッ潰せるトコまで来たのによー。ふざけんな、横芝。お前らにはスポットライトは浴びせない…。」
謙也は物凄い眼光を放ちながらスマホを手にするのであった。