真夜中に妹が……-1
○
真夜中にオレはリビングのようすを見に行った。
案の定s学五年生の妹
りゆはテレビの前のソファーに寝落ちしていた。
(夜ふけのアニメ、ちゃんと見られたのかな……)なんてこと考えながら、オレはりゆを抱き上げた。
りゆはオレにお姫様抱っこされてリビングから連れ出されたことも知らないように、だらしなく唇をわずかに開いて寝息をたてている。
いつもこんな時、オレはパパの言うことを思い出す。
「りゆは敏感やからな。オレがチラッと寝顔を見ただけで、パッと目をさますんや。」
ママも似たようなことを言ってた。
じゃあ、オレが近寄っても抱っこしても目を覚まさないってのは、寝たふりしてるってことなのかねぇ。
りゆとオレとは、17歳トシが離れてる。
りゆを抱っこして寝室に運んでると、ほぼ父娘なんだわな。
オレの腕を遠慮なしに枕にしてるりゆの寝顔を見てると、オレのワルい心がわいてきた。
オレはりゆの部屋の前を通過して、オレの部屋にりゆを運びこんだ。
少し乱暴にりゆをオレの寝床に置いたけど、りゆは唇動かすこともなく眠ってる。
(寝たふりやないんやな……)
パジャマごしにりゆの胸に触れてみた。
(柔らかっ……ひと月ごとにふくらんでいきよるな。)
これくらいなら、りゆが目を覚ましても笑ってすませてくれる。だけどオレは目覚めたりゆが「何するんよ!」と言いそうな手段を用意してた。
(ほら、りゆ。いいモノやるよ。)
オレは封を切ったばかりの細い棒を、りゆの半開きの唇に当てた。りゆは唇をすぼめてそれをくわえた。
りゆの唇から、白い煙がこぼれてくる。
それはオレが知り合いからもらった試供品の「電子タバコ」だった。
(りゆ、『本物』吸った経験あるんかいや……?)そんな疑いがわくほど、眠るりゆに電子タバコをくわえさせると軽く吸いこんで煙を吹きだす。
愛らしい顔立ちのりゆの、つぼみのような唇からあふれる煙がオレの顔に届くたびに、オレの下着の奥は抑えられないほどの漲りで弾けそうになった。
だけど、急にその漲りが萎えた。
(ごめん……りゆ。)オレはりゆをまたお姫様抱っこすると、りゆの部屋に向かった。
もう、おんなの身体になっているりゆ。だけどオレはりゆが赤ちゃんのときから、こうして抱っこしてきた。
家で商売してるから、パパとママが忙しいときには『育児』めいたことをしてたオレ。
まだ一歳に満たないりゆを抱っこしてるオレに、ママが言った。
「りゆは、アンタを『カレシ』しとるわ。」
「えーっ、オレは兄やん。りゆのカレシなんかとちゃうで。」
「アホ。『彼氏』と違うんや。『彼視』しとるんや。」
「どういうことやのん?」
ママはりゆの頬を撫でて言った。
「パパに抱っこされとるときより、アンタに抱っこされとるときの方が、このコ気分がええみたいや。」
「そうかな……オレ、メチャ緊張しとんねんけど。」
「このコが2歳にもなったら、アンタはこのコと一番触れあっとるオトナのオトコになるんや。何があっても、アンタがまず頼りになるんや。」
「…………はい。」
たしかにオレは、りゆの一番近くにいるオトナのオトコのまま過ごしてきた。
りゆがパパにさえ見せない寝顔も、警戒することなくオレには見せてる……そんなりゆに、オレは何してるんだろ。
次の日の朝、まだ寝床の中にいるオレの横にりゆがすべりこんできた。
「ねえ、お兄ちゃん。」りゆはオレをにらんだ。「わたしが寝てる間に、何かしたん?」
「……したよ。」
「何これ、クチのなかが、すごくライム臭いやんか……」りゆはオレの頬に唇を寄せた。「なんか、クチ移ししたん?」
「まあ……そんなもんや。」オレが言うと、りゆは身体をずらしてオレの胸に顔を当てて言った。
「そんなん……起きとう時にやってくれへんかったら、わたしなんにも面白ないやん。」