HAPPY LIFEE-2
「あっ、そうそう。渡辺君だったかしら、野球部の。あなたをここまで運んでくれたのよ」
え…渡辺君が?
「明日香〜!大丈夫?」
夕里…。心配して来てくれたのね。
体育着のまま早絵と二人でやってきた。
「もう、おバカじゃないの?無理して走るなんて。見学してればよかったのに」
早絵ったら、おバカはないよ…。
「心配かけてごめんね」
その後すっかり眠ってしまったみたいで、目が覚めると夕方になっていた。時計を見ると、ちょうど5時をまわったところだった。
起き上がってベッドを仕切るカーテンを開けると、早絵と仲川先生がいた。
先生はコーヒーを飲んでいたようで、部屋中その香りでいっぱいだ。
「橘さん。調子はどう?歩いて帰れるかしら?」
「先生、私一緒に帰るから大丈夫だよ。ねっ、明日香」
「うん。ありがとっ」
早絵が教室から持って来てくれた制服とカバンを受け取って着替える。
「じゃあ気をつけて帰るのよ。大谷さん、よろしくね。さようなら」
先生にお礼を言った後、ふっと気になった。
「そういえば渡辺くんが私を運んでくれたって本当?」
「うん。ちょうど渡辺くんが第一発見者で、すぐに抱え込んで保健室まで運んだの」
「運んだって、どうやって?」
「…お姫様抱っこ?」
次の日〜
「おはよ。昨日はありがと。運ぶの、大変だったでしょ?ごめんね」
教室に入ると、真っ先に渡辺くんのところへ行った。
「全然余裕。背小さいし、軽かったから子供抱えるようなもんだよ」
ん…まぁそっか。
「貧血だって?あんま無理すんなよ」
「うん、ありがと。あっ、コレ!あげる。助けてもらったお礼に」
「…!?」
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「で、何あげたの?」
パスタをフォークに絡ませながら聞いてくる。
みんな忘れないでね、ここは早絵が働いてるファミレスだよ。
「カリカリ梅」
「えっ?」
「カリカリ梅だよ。知らないの?」
「知ってるけどさ、なんでカリカリ梅なの?」
実はあの日の夜、千栄先輩からメールがきてたんだ。私が倒れたって聞いて心配してくれたみたいで。
渡辺くんに運んでくれたお礼しようと思ってるって話したら、『あの子は昔からカリカリ梅がスキだから…』って教えてくれたの。
「なるほどね。ところでさ、早絵いないのかな?さっきから探してるんだけど」
「言われてみればそうかも…」
店内をキョロキョロ見渡す。今日バイトあるって言ってたのにな。