蹂躙-10
『……自分の身体を擲って、犯罪を止めようってのか?それとも「私を無視して若い子に走るのは許せない」って《プライド》がそうさせてんのか……どっちなんだあ?』
「〜〜〜〜〜ッ」
心が騒ついて収まらない。
この男は心の根っこまで破壊して、心身共に姦すつもりだ。
『自分を犠牲にしてまで俺達を止めたいんだあ?そういうカッコいい《ヒロイン》の役とか似合いそうだもんなあ弘恵ちゃんはあ』
『いやいや、マン汁垂らしまくりの潮吹きまくりだっただろ?もう《発情》してスケベな身体が止まらねえんだよ。だよなあ?』
『ククク!早く答えろ。せっかく勃ってきたチンポをもっと勃たせんのか、それとも萎れさせんのか、二つに一つだぜえ?』
身体は勿論の事、弘恵は精神すらも逃げ場を失った。
人権を剥奪する言葉でこの空間は埋め尽くされ、しかし、仄かに感じられるようになった〈熱気〉を、冷ましてしまう訳にはいかなかった。
(む…無理よッ!これ以上は私ッ…わ、私ッッッ!)
いつの間にか、風花の顔面からは洗濯バサミと鼻鉤が外されていた。
視力が残されているのかすら判別不能な眼差しが弘恵の視線と交錯し、そして風花は力無く顔を左右に振っている。
『ふうちゃんも見てんだぞぉ?仲良しの井形弘恵って女がどう答えるかってなあ』
『どこまでもカッコつけんのか、それとも本性を現すのか、こいつは興味津々だろうぜ?』
「ッッッッ!!!」
風花は助けを待ち続けていたはずだ。
日下部や警察、そして自分に対して、ずっと思い続けていたはずなのだ。
それを裏切ってしまうなど、あまりにも残酷ではないか。
だが、風花も自分も、それよりも強く思っていた事は[拉致事件の解決]という一つの願いだ。
今ここでヤツらを自由にさせては、また新たな被害者が生まれてしまう。
単なる時間稼ぎでしか無かったとしても、それが功を奏する可能性はゼロではない。
(……そうよ…捜査は始まってるのよ…ッ)
これまでの拉致事件が未解決のままで終わる訳が無い。
この男共の全員と、その顧客も一人残らず逮捕される日は必ず来る。
焼けるほど熱い涙が、真っ赤な頬を流れ落ちる。
未だに痙攣の収まらぬ瞼に力を込め、弘恵の《弱さ》を打ち消さんとする眼差しは、眼前の男の眼球を貫いた……。
「ッく!……は…発情してます…ッッッ」
目の前の男の口角がつり上がり、その向こうにあるボロボロの泣き顔は何度も左右に振れた。
『……発情?誰が発情したんだあ?』
『自分の事を私≠チて言うなよ?必ず「弘恵」って言うんだ。ほら、もう一回いまのセリフを言ってみな』
「ひ…弘恵はッ…ぐぐッ!弘恵は発情し…ッ……発情してますッ……ひぐ!ぐ…ぎぎ」
「……………!」