第三十三章 裏切り-3
アッという間に、香奈子は身動きが取れなくなった。
『な、何をするんですっ?』
必死の形相で声を絞り出している。
だが男達は不気味に笑っているだけだった。
『静かにしろぉっ・・・』
ムチがなった。
黒尽くめの女が目の前に立ちはだかり、叫んでいる。
『ヒッ・・・』
恐怖に顔が引きつる。
『では、奥様・・・
お名前を聞かせていただけますか?』
『い、いやっ・・・』
『おやぁ・・・どうなされました?』
不思議そうな表情で、顔を近づけてくる。
『可笑しいですねぇ・・・
ご自分から望まれたと聞いておりますが・・・』
『ち、違うっ・・・違いますっ・・・』
すがるような目で竹内を見るのだが、黙ったまま笑みを浮かべている。
『観念するんですね、奥様・・・』
シルクハットの男が意地悪く囁いた。
『あの方からは、あなたをもっと・・・
淫乱にするよう命じられています』
『そ、そんな・・・』
絶句する香奈子を男達が取り囲んでいく。
『や、やめてっ・・・』
恐怖でひきつる香奈子が悲鳴をあげる。
『あうっ・・・』
割り込むようにして黒尽くめの女が近づくと、鋭くムチを飛ばした。
『名前は、と聞いているんだよっ』
ショーは香奈子の意思に関係なく始まっていた。
生贄になった獲物に自由が許される筈もない。
助けを呼ぼうにも、周りの人間達全てが敵であった。