狂気の連鎖-7
「ん"ぐぎぃ"ッッ!?」
鈴木は弘恵の長い髪を乱暴に掻き上げて頭頂部で握り、正義面した報道記者の悔しさに歪む顔をカメラに向けて曝した。
『観てますか、お客様あ。コイツがあのメロン尻のトップアイドル・田名部麻友の住所をバラした報道記者様ですよお?個人情報を垂れ流した《主犯》の井形弘恵って……』
「や、やめろおッ!!なに私の名前を言ってんのッ!!??」
『オイオイ。田名部麻友にあんなコト≠オといてそりゃあ無えぜえ?他人の個人情報はどうでも良くて、自分だけは守りたいってかあ?』
古芝風花もクズだったが、この井形弘恵というメスもクズだ。
世の中に蔓延る悪を斬る《正義のヒロイン》を気取り、その無能な行動のせいで犠牲者が出ることに何の罪悪も感じてはいない。
『コイツは2月3日生まれの26才。右顎のホクロがチャーミングな井形弘恵ってクソメスでぇす!』
「ち、ちょッッッ!?私の免許証撮らないでよお!!!」
『住所はコチラになりまぁす。素敵な服とかイヤラしい下着とかが欲しいからって、空き巣なんかしちゃあダメですからねえ』
大っぴらな個人情報の漏洩に、弘恵の感情は震えに震えた。
このDVDを買った社会の《ダニ》に、自分の住所が知られてしまう。
いや、自分だけではない。
風花も同じ目に遭っているのは明白であるし、彩花や夏美も例外ではないはず。
「い…いい加減にしろよッ!!こッこのぉッッ!外せえぇ!!!」
吊られた腕は曲がりもしない。
そして麻縄で足枷に土嚢袋を繋がれた脚も、少しも移動が出来ない。
憤怒に駆られても手も足も出せず、捩るように揺れる尻だけが虚しくも感情≠表していた。
『クククッ……自分が携わった″品の人気が気になるだろ?ほら、このパソコンにな、田名部麻友の卒業作品・[ケツマンコしか勝たん!]を購入したお客様の名前が……ククク!』
「ん"ぃ"い"い"ッッッ!!??」
乱暴に掴まれたまま眼前に突きつけられたパソコンの画面には、あのDVDを購入した者の本名から住所まで、全てがリスト化されて映っていた。
(こ…こんなに…ッ……い、いっぱい…ッッッ)
法外な値段で売られているのも驚きだが、その購入者リストの多さにも弘恵は驚愕するしかなかった。
全国津々浦々、一つの市に数人は居るのではないかと思えるほどの人数が、田名部麻友の作品を購入していた。