狂気の連鎖-6
「ち…ちょっ…!?やめろ…ッ!やめろおぉぉッッッ!!!」
「はぶッ!?ぐ…ん"ん"ん"ッ!」
突き立てられた中指と薬指が蜜壺に潜り込むと、風花はブタ鼻から甘えた声を漏らして身悶えた。
『風花ちゃんは手マンが大好きだもんなあ?いつもみてぇにチンポを待ちきれずにイッちまうかあ?クッククク!ほら、お友達の弘恵ちゃんが見てるぜ?なんだよ、恥ずかしくねぇのかよお、ああ?』
「ぷも"ッ!?おっぷぅ!は…ほおぉぉッッッ」
「ッ〜〜〜〜〜〜!!!」
瞼を吊られたギョロ目はグルッとひっくり返り、ブタ顔は鼻水を吹いて堕落を叫ぶ。
顔面崩壊を自ら推進した〈愛玩動物〉は発情を止められず、弘恵に届けと言わんばかりに高々と淫水を噴射した。
『ったくよお、呆れたモンだなコイツはよお』
『そりゃあ彩花の目の前で唯先生が姦られてんの見て、オマンコ濡らすようなヤツだからな』
『やっぱりさ、モリマンってのは《ヤリマン》なんだよ。川上雪絵も娘の愛も、マン汁ダラダラ垂らしてアヘ顔曝してたしなあ』
弘恵は俯いていた。
顔を上げればそこには風花が居る。
良心の呵責に押し潰され、死すら選ぶまでに絶望した風花……壊れた心では堕ちた身体の制御も叶わず、直視不可能な醜態を曝した親友を、どうして視界に入れられよう……。
「……だッ黙れえ…ッ!よくもふうちゃんにッ!この……このクズゴミヤロウッッッ!!!」
しつこい罵声と嘲笑に、弘恵は髪を振り上げて叫んだ。
あまりの言葉の暴力に殴り掛かろうとした弘恵だが、あまりに重い土嚢袋に繋がれた両脚は全く歩を進められず、吊られた腕と背中の角度が開くに従って、肩の関節は外れてしまいそうなほどに激しく痛む。
『ククク!俺らがクズゴミぃ?まあ、否定はしねえけどよお……でもオマエらはマスゴミ≠フ下っ端の《犬》じゃねえか』
「ッ……!!!」
弘恵の、そして風花の仕事に対する真摯な思いや誇りを侮蔑する台詞を吐かれ、額にはクッキリと青筋が浮かんだ。
風花は一連の失踪事件の犯人を追っていた。
そして弘恵は、その事件に使われていたであろう盗難車と、車両窃盗団を追った。
『探られたらマズい』という焦りから、この男共が拉致という犯罪に走ったのは明白であり、そんな身勝手な逆恨みが行動の発端となる《畜生》から、ここまでバカにされる謂れはない。
『ずーっとテレビ観てんだけどよお、なんで古芝風花に触れねえんだ?どうせ『マスゴミがやらかした』『古芝風花って記者が余計なマネした』ってネットで騒がれるのが嫌で、それで黙ってんだろ?』
「ッ〜〜〜〜〜!」
弘恵は反論出来なかった。
日下部の言葉に納得したのも事実であったし、それが最善の道だと思い、悔しさを押し殺したのも間違いなかった。
『そういや前にもマスゴミはやらかした≠謔ネあ……ほら、コイツがオマエらの《被害者》だ』
「…………!!」
差し出されたDVDのパッケージには、数週間前に失踪した田名部麻友の悲惨な姿があった。
そして弘恵は、この男の次の台詞が容易に想像出来ていた……。
『コイツのオヤジの車が盗まれたって、テレビで流したよなあ?……なあ、普通の一般人は気づかなくてもよぉ、その車を《盗んだヤツら》には、ドコが田名部麻友の実家かバレちまうんだぜ?例えば……今日、取材しに行った解体工場の連中とかよお』
[盗難車両を追って東南アジアへ]
という番組制作に、弘恵は関わっていた。
その放送日が決定した直後、田名部麻友の父親の車が盗まれたとの情報を得た。
弘恵が得ていた情報が、そのまま番宣のように報道されたと知った時、弘恵はその《危険性》に焦りを感じていた。
だが、記者としては新人の弘恵には、上層部への意見具申など出来ようもなく、そして、芸能界を引退した田名部麻友は、程なくして失踪した……。
『さすがにガードが固い元アイドルを、俺らが拉致れるとは思ってもなかったが……ん?少しはこのDVDの製作に《関わって》んじゃねえのか、弘恵ちゃんよお?』
「ッッッッ」
情報をテレビで流したのは弘恵ではない。
しかし、全くの無関係というには無理があり過ぎる。
旗色の悪さに僅かだが伏せ目がちになったが、元はと言えば、犯罪を働いたのはコイツらなのだ。
己れの罪を棚に上げ、その責任を転嫁するなど身勝手に過ぎよう。