女らしく【17】『霊剣と妖刀とすれ違い』-6
確かに大和に言われた通り、力が安定しない。
分かってる!分かってはずなのに!今は依頼に集中しないと…
ギンッ!…ギンッ!と金属の打ち合う音が深い黒に飲み込まれていく。
ギィン!
大和の宵闇が弾かれた。ザクッという音がして地面に白刃が突き立てられる。
「大和!がっ!」
助けようとしたオレの腹に蹴りが見事に決まった。息が詰まり、身体がよろめく。
流れる様に大和に刃が迫る。
だが、突然振り下ろされた禍暁がピタッと止まった。大和と禍暁の間に不可視の結界が築かれた様だ。
次の瞬間には奏が闇の中から姿を見せ、滑る様に走ると黒傘を槍の様に霊体へ突き立て様とする。
しかし、相手は禍暁を水平に振るうと結界を易々と切り裂き、奏の攻撃を躱して、闇の中へ姿を隠していった…
分が悪いと判断したのだろうか…
「大和、マコト大丈夫?」
「…晴樹、禍暁は?」
「今、博士達と詩乃、稲荷が追ってる」
「マコト、大和…何をやってますの!」
珍しく奏が声の調子を荒げた。
「しっかりなさい!私達が来なかったらどうなっていたと思いますの!」
奏達が助けてくれなかったら、大和は…いや、オレも危なかった…
「今回はチームワークも必要なんですわよ!貴女が一人乱れただけでもチームに何等かの被害が出る可能性だってあるんですわよ!もしかしたら最悪の事態だって…貴女の最愛の相手が死ぬかもしれないんですのよ!」
オレの心に奏の言葉が重く、伸し掛かる。
「それに…大和!貴方は何時まで悩んでるんですの!式ならばパートナーの気持ちを汲み取ってあげなさい!
貴方がもし、マコトのことを何時までも待っていられる強い娘だと思ったら大間違えですわ!
マコトはこの一週間、耐え続けていたんですのよ!震えるのを堪えて告白して…泣くのを堪えて貴方の返事を待ってたんですのよ!」
奏の怒声が夜の街に響く。晴樹は真剣な面持ちでトランシーバーからの通信を聞いている。
「…はい、了解!奏、博士からの連絡。目標は郊外の廃倉庫に入った模様…行くよ」
晴樹が通信を切った。
「分かりましたわ、浮ついているなら帰って下さった方がいいですわ。今のままじゃ死人がでますわよ」
奏と晴樹は踵を返し、連絡のあった倉庫へと向かった。
後には大和とオレの二人だけが残っていた。
しばらくザワザワと風だけが騒いでいた。
「…大和…ごめん…オレのせいで…」
「…いや…俺が長々と考えたばかりに…ごめん」
静かに二人の声が風の中で舞った。