青い空と白い水着-4
翌朝。
気持ちのいい朝。白い砂浜は波にすっかり洗われ、まだ誰にも踏み荒らされていない。
そんな人気のない砂浜に水着を着た碧がなにやら真剣な面持ちで仁王立ちになっていた。
「少女よ大志を抱けっ!」
びっと人差し指を突き出し、無人島を指差す碧。男の子の事とか、セックスの事とか、色々な思惑を全て振り払い、今は無心で何かしたかった。
そのままざぶざぶと海に浸かり、一路無人島を目指す碧。
時折、波間に浮かんで休憩を取りながら、碧はなんとか無人島に辿り着いた。子供の頃は美奈子やその友達達と一緒だったので、冗談を言い合っているうちに気も紛れ、これほど遠いとは思わなかったが、今は随分と距離を感じる。
なんとか島へ辿り着くと、子供の頃に来た時と違い、そこは鬱蒼としていた。一人で来た心細さもあるのだろう。それでも碧は引き返そうとはせず、意を決して上陸した。
ともあれ、苔生した岩場を上がり、奥へと進むとそこには古びた鳥居があった。子供の頃見たときには鮮やかな朱色だったが、今見ると退色し、大きさも随分縮んだように見える。
そして、鳥居の奥には祠があり、そこには男根を模した御神体が鎮座していた。男女のシンボルを御神体に戴くのは珍しいことではない。男女の交わりは神聖な行為であり、子孫繁栄はいつの時代も共通の願いであるからだ。
しかし、碧にしてみれば、あまりまともな神様とは思えなかった。子供の頃はその不格好な形に笑い転げたが、今見るととても猥褻で、形も妙にリアルで正視に耐えない。
「そう言えば、こんな神様が居たんだよね……」
碧はそう呟くと、恐る恐る祠に近づいていった。亀頭の丸みやえらの張り具合が妙にリアルで、碧はその頭に思わず触れた。
それは石であるにも関わらず、熱い感じがした。そして、どくどくと脈打つようで、まさしく本当の男根のようであった。
「これが、美奈子お姉ちゃんのあそこに入ったんだ……」
ふと、昨日の岩場での出来事が脳裏をよぎり、思わず呟く碧。石からの鼓動が自分にも伝わったかのように、妙に興奮し、下腹部が熱く火照り、乳首がじんじんと疼く。
するとその時、枯れ枝を踏む小さな音が聞こえ、碧は思わず振り返った。人の気配を感じた気がしたのだが、誰もいるようには思えない。
蝉の声が一層激しく聞こえ、碧は身を縮めた。
ともあれ、妙な悪寒を感じた碧は早くそこから立ち去りたいと思い、もと来た方へと歩き出す。
その時、不意に鳥居の陰から一人の男が踊りだした。
「きゃぁああああっ!!」
あまりの恐怖に悲鳴をあげる碧。
それは、顔の上半分を葉の仮面で覆った奇妙な男であった。逞しい褐色の身体にはほとんど何も身に着けてはおらず、腰にまいた蓑からは赤黒い陰茎がへそを突かんばかりに反り返っている。
仮面でその表情は伺えないが、興奮した息づかいと、カチカチに充血した逸物がその目的をはっきりと示していた。男の手が碧の手首に掴みかかる。
「いやぁああっ!!」
碧は必死の力で男の手をはねのけると、祠の方へと走り出した。祠の向こう側には林があり、そこへ逃げ込む碧。しかし、いつの間に先回りしたのか、仮面の男が碧の目の前から現れた。
「な、なんで?」
信じられないと言った様子で呟く碧。振り返ると、やはりそこには仮面の男がいた。背格好の違いから、目の前の男と背後から迫る男は別人であった。しかし、後ろの男と同様、前の男の股間にも、凶暴にそそり立った肉棒が露出している。
ともあれ、碧は仮面の男を避けて走り出した。別の男、第三の仮面の男が横合いから飛び出し、碧に掴みかかろうとしたが、碧はなんとかそれを躱し、林の奥へと逃げ込んだ。
「(何で、何なのあいつら?もう、訳分からないよ……)」
茂みに隠れ、身体を丸くする碧。変な連中に襲われ、恐怖に身体が震え、目に涙が滲む。
「(こんな事なら、田舎になんて来るんじゃなかった……)」
ぽろぽろと涙をこぼし、声を殺して泣く碧。しかし、背後に人の気配を感じて振り返ると、そこにはやはり不気味な仮面の男が立っていた。
「いやぁああああっ!!」
悲鳴をあげ、逃げだそうとする碧。男の手が水着に触れ、量感のある乳房が片方こぼれ出す。
しかし、碧はそんな事はお構いなしに走り出した。捕まればそれ以上の恥ずかしいことが待っているのだ。
とは言え、何人もの大の男に追いかけ回され、次第に追い詰められていく碧。行く先々で男達は姿を現し、その数を増やしていく。そしてついに、碧は周囲を取り囲まれ、行き場を失ってしまった。