第二十八章 思い出づくり(画像付)-10
【おおっー・・・】
拍手と歓声が沸き起こる。
静まるのを待って、男が女に尋ねた。
『そうですね?』
女は俯いたまま、否定したいのか首を横に振っている。
『おやぁ・・・?』
大げさな表情で声を出した。
『どうして?気が変わったのですか?』
『ゆ、許してっ・・・私、帰りますっ』
『それはないでしょう・・・』
場内からブーイングが起きる。
『大丈夫ですよ、
嫌がっている人をその気にさせるのが
私どもの仕事ですから・・・』
男が手を上げて制すると、パラパラと拍手が起こった。
『さあ、何も怖がる事はないのですよ・・・』
顔を近づけ、諭すように声をかけている。
『この間と同じようにするだけですから・・・
前は凄く喜んでくれたでしょう?』
男はニヤリと顔を歪め、シルクハット越しに客席の方を眺めた。
(あああ・・・)
その目が、香奈子を絡みつくように見ている。
『もう、以前のあなたとは違うのですから・・・』
まるで自分に向かって話しているようで、一つ一つが胸につきささる。
脳裏に自分が犯した淫靡な痴態が浮かび上がっていた。