愛し方-1
ベッドルームには、私、妻、そして、男の順番で戻った。男にベッドの用意をさせるほうがSらしいのかとも思ったが、別に私たちはSMプレイをしようというのではないのだし、と、そう思って私から身体を拭き、そして、ベッドの掛布団を盛大にはがしたりして準備をして妻を待つことにしたのだ。
妻はバスタオルを巻いてベッドルームに来ると、大きなベッドの端に、ちょこんと座った。
「あの人、女の身体の拭き方も知らないみたいなの」
「お金を払って奴隷になるというのは、そうしたことだろう。それに、今日の君は奴隷女であって女王様というわけではなかったんじゃないのかな」
たいした会話も出来ない内に男は再び、腰に手ぬぐいを巻いた格好で現れた。バスルームで手ぬぐいは濡れてしまったはずなのに、男の腰の手ぬぐいは、どう見ても乾いているようだった。濡れることを想定して替えの手ぬぐいを持っているあたりは、優秀な奴隷なのだろうな、と、私はそう思った。そうした気配りは妻にとっても嬉しいし、何よりも、妻を安心させたことだろう。ただし、手ぬぐいでは隠しきれるはずもないほど、彼のそれは怒張していた。
「うーん、それをいきなり妻に入れるのは難しそうだな。妻がそれを受け入れられるようにするから、少し、見ていてくれるかな。いや、むしろ、妻を愛撫する方法を勉強してくれるかな。その代わりに、自由に動いていいから、いろいろな場所から私の行為を見て、それを勉強して、次回には、私と同じことが出来るようになってもらえると助かるんだがな」
私が、彼に偉そうに言ったのはプレイというのも、もちろん、あった。しかし、私には、女を性的に満足させる自信はないが、妻を性的に満足させる自信だけはあったので、そこだけは誰に対してでも、上から目線で会話が出来たのである。それゆえに、ここは、少しばかり威張ったような物言いになってもいいのかな、と、そう思ったのだ。
「彼女はね。後ろから攻められるのが好きなんだよ」
そう言ってベッドの縁に座る妻の背を妻の上半身を両足ではさむようにして抱いた。抱きながら、そっとタオルを取る。そして、同時に背筋から耳の後ろに唇をあてた。
「こうしたら、少し強引にベッドに引き込むんだよ」
私は妻を後ろから抱きかかえるようにして、まるで、タケノコでも引き抜くかのようにグイッとベッドに引き寄せ、さらに身体を回転させながら妻をうつ伏せにしてベッドに寝かせた。昔なら初老と言ってもいいような年齢だが、妻の尻は新鮮な桃のように固く、そして、ぷっくらと膨らんでいる。ウエストは括れ、身体は引き締まっている。
「綺麗だろう。この美しい背を見ていたら、誰だって唇を寄せたくなるだろう」
そんなことを二人のセックスで言うことはない。他人がそこにいるからこそ言える台詞なのだ。
もしかしたら、妻がこの不可思議な性の提案を私にしたのは、これが目的なのではないだろうか、と、そんなことを考えたが、その考えは、すぐに、高まる興奮の中に消されて行った。