妹、内憂を晴らす-1
百合子はお父さんに向かって懇願した。「お父さん、お姉ちゃんの子供を産ませてください、お姉ちゃんは中絶なんてできないんです」
お父さんは厳しい口調で「なぜだ? お前たちはまだ若いんだぞ、こんなことで人生を台無しにする必要はないぞ」
さやかが口を開いた「授業時に見せられた、中絶のビデオを、あの吸引機から逃げ惑う赤ちゃんの映像を、ぐすん、あれは本当に恐ろしかった……、あれを見てから、私は中絶なんて絶対にできないと思いました、それは殺人と同じだと、うぅぅ」
百合子はスマホをお父さんに差し出した、「これ、見てください、私の証券口座の残高です、」 お父さんは眉をひそめながらスマホを手に取った、画面には、余力資金¥2,500,154 時価総額¥9,754,804という数字が表示されていた、
「な、なんだこれは!……」お父さんは声を失った、
百合子は冷静に説明した、 「私は株式投資をしています、お父さんがくれた資金30万円と中古PCとモニターで、自分でシステムを作って、データ分析と機械学習を使って、売買のタイミングを決めています、昨日までの累計利益は約1000万円を超えました」
「そ、そんなことが……小学生が……」お父さんは信じられない様子だった、
お母さんも驚いていたが、少し冷静さを取り戻した、 「百合子、それはすごいことだけど、それで何が言いたいの?」母は女大金を手にして人が変わってしまわないか心配しているみたいだ、
「言いたいのは、このお金でお姉ちゃんをサポートするということです、お姉ちゃんの出産から育児、そして進学までも、私はお姉ちゃんの子供の叔母になるんですから、責任を持って面倒を見ます、だから、お父さんもお母さんも、お姉ちゃんを責めないでください、お姉ちゃんは幸せになる権利があります、」 百合子は堂々と宣言した、お金が惜しくないといえばうそに聞こえるかもしれないけど、大好きな姉のためなら差し出すことは百合子にとってうれしいことだった、
さやかは涙ぐみながら妹に感謝の気持ちを伝えた、 「ありがとう、百合子、本当にありがとう、私もこの子を産みたいと思ってるの、だから、どうか理解してほしいの、」
「そうです、お父さんお母さん、私たちは家族なんです、助け合わなきゃいけないんです、」百合子はさやかの手を握る、
「いや……でも……しかし」お父さんはまだ納得できない様子だった、
「金で解決するのはどうかと思うぞ、それに、その株式投資も危険じゃないか? 万が一にも失敗したらどうするんだ? それに百合子も勉強や遊びに時間を割くべきだろう? こんな大人の世界に首を突っ込む必要はないぞ、」
「大丈夫ですよ、お父さん、私はリスク管理もしっかりしていますし、勉強や遊びも充分にしています、私は株式投資が好きなんです、それに、これは大人の世界ではありません、これは私の世界です、私は自分の力で何かを成し遂げたいんです、それが私の夢なんです、」 百合子は自信満々に言った、
「それに、金で解決するのではありません、これは私の愛情の証なんです、私はお姉ちゃんとその子供を愛しています、だからこそ、私の全てを差し出します、これが私の幸せなんです、」 百合子の言葉に、さやかもお母さんも感動する、
お父さんも少し考え直したようだった、 「そうか……そうか……」お父さんはしばらく黙っていたが、
「百合子、お前は本当にすごい娘だな、私はお前のことを誇りに思うよ、だが、それでも私はまだ納得できないことがある、それは、お姉ちゃんさやかの相手のことだ、あいつは誰なんだ? どうして名乗り出ないんだ? 責任を取らないつもりなのか? そんな男にお姉ちゃんを渡すわけにはいかないぞ、」
「お父さん、それは……」さやかは言葉に詰まった、百合子も困った表情をした、彼女たちは、さやかの相手が百合子の同級生であること、そして百合子も彼と関係を持っていることを、お父さんに言えるわけがなかった。