休日の性愛-5
「なんで?」
「だって、おっぱいとかふくらんだら、お兄ちゃんもっとへんたいになっちゃうかもしれないから」
ぺしぺし、と俺の両肩を手のひらでたたき、ぱたぱた、と両足の脛で俺の膝をキックする。華奢で丸みのまだ薄いお尻のふたつの肉がしのちゃんの動きに合わせてふるふる、と揺れる。
「もちろん、しのちゃんが大人の身体に近づいたら、もっといろんなエッチなことしのちゃんとしちゃうからね」
「やあだあ、お兄ちゃんのへんたいへんたい」
ぷぅぅ、とむくれるのは照れ隠しだ。
「へへ、でもしのちゃんとふたりで気持ちよくなれるの楽しみだな。それまで、その後も、俺たちずっと一緒だよ」
しのちゃんがむくれた頬からふぅぅ、と息を吐く。8歳の幼女臭い匂いを嗅がせてくれたしのちゃんが、にへ、と笑顔になる。
「うん!あたしたち、ずっと一緒。お兄ちゃんとみやこでけっこんするんだ!」
きゃー、とおどけるしのちゃんの温かい裸の身体を抱きしめる。そのまま指先がしのちゃんのお尻の臀裂をまさぐり、その亀裂の中に右の人差し指がのめり込む。そのしのちゃんのお尻の向こうで、ぺたん、と横たわっていたおちんちんがむくむくと隆起していく。さおりさんごめんなさい、さおりさんの家なのに、しのちゃんと性愛の第二ラウンドに入ります。しのちゃんの唇と甘い唾液を吸いながら、俺は身体と心に例えようのない幸福感が満ちるのを感じていた。
「ねえ、あんた何かいいことでもあったの?」
離陸していく737-800を見送ってターミナルビルに戻ると、一足先に戻っていてカウンターの片付けを始めていた琴美が言った。
「ん?」
「だってあんた、朝からずっと顔に締まりがないんだもん」
「ひでえなその言い方」
「ね、何があった?もしかして」
ずい、と琴美が顔を近づける。
「かわいい彼女ができた、とか」
26歳の琴美の息臭と8歳のしのちゃんの息臭って性質がぜんぜん違うような気がする。体質とかじゃなくて、やっぱり子供の身体からは子供の匂いがするもんなんだな。
「どうかな」
「え、なになに、そうなの?ちょっと、え、もしかしてこないだ言ってた好きな子?」
適当にニヤニヤと往なして、デスクで電話中の支店長しかいないオフィスに戻る。締まりがない、まあそれは生まれつきでもあるんだけど、精神的な充足がそうさせている自覚は存分にある。これからもしのちゃんの「こいびと」でいる、しのちゃんのそばで、しのちゃんと離れずに、しのちゃんの温もりや匂いややさしい歌声や愛情を浴びながら、しのちゃんに俺の精いっぱいの愛情を注ぎながらふたりで過ごす。そういう未来が見えてきて表情が緩まなかったら八百万のバチが当たる。
今日帰ったらまたしのちゃんの引っ越しの手伝いに行くか。そう思いながら報告書を入力するためにマウスを動かしてスリープを解除した俺に、電話を切って立ち上がった支店長が声をかけてきた。ちょっといいか。促されてパーテーションの裏に回る。
目をしばたたかせながら、支店長がぼそり、となにか言った。いや、聞こえていたけれど、俺の神経が理解を拒んだ。非力なCPUの、4GBしかメモリを積んでいないパソコンがスリープから回復するときのように回路がスムーズに繋がらない。え、いまなんて。取り繕うように無意識にひとり言のようにつぶやいた俺に、支店長がもう一度伝えてくれた。俺の異動の件、いったんペンディングにすると人事部から電話があった、と。