姉妹という関係性-2
「お姉ちゃんは知っているわ」
「えっ……」
……
「……保健室で何してたの?」
あやかに問い詰められ顔を真っ赤に染め目をそらす百合子「べっ別に何もしてないよ」そっぽを向いて団扇であおぎ出すので、
「やっちゃったことは、もう仕方ないから、コレを飲みなさい」
妹の座る学習机の上に赤い錠剤の入ったシートを差し出すのだ。
「したんでしょ? 中だしで」行為の一部始終を見てしまったのだし、からだのことは姉として心配なのだ、
「……」
ますます顔を赤らめ、強く団扇をあおってそっぽを向いたままの妹、……生理なんかまだ来てないんだから中だし上等じゃない、と内心思う妹だったが、
「飲まないのならお母さんに言うわよ」
その冷たく言い放たれたひとことに妹は絵の具で塗ったくったように青ざめ、「そ、それだけはやめて」と慌てふためくので、お姉ちゃんは百合子の味方だからと、ピルのことを説明し、妊娠したりしないようにとその薬を持たせるのだ。
……でもどうしてお姉ちゃんがこんなおくすりを持っているのか疑問におもい、
「ねえ、おねえちゃんもしかして」
「百合子の想像する通りよ」答えながら下腹部をさするさやかで、いくらさやかと百合子が姉妹だと知らなかったとしても、まさか小学生に手を付ける彼だとは思わなかったし、年下の彼との子供を抱える失敗をすることになるとも考えなかったのだ、それでも学校の授業で中絶について教育を受け、その時の映像を思い出すととてもそういった処置を受ける気にはなれない姉、かといってもはや彼に恋愛感情はないし、どうしたらいいのか相談することも親に対してもできないでいたさやかである。
「でもどうするのお姉ちゃん?」
「わからないわ……」
妹は小学六年生だというのに、高3のさやかは百合子が思っていたよりずっと賢いことに気が付いた、セックスしたことは褒められたことではなかったが、姉の体を心配してくれているのだ、それに引き換え、さっきまでお説教していたじぶんの愚かさに加え、おなかの子をどうしていいのかわからないさやかである、11歳の少女に手を付けるような年下彼氏など愛想が尽きたが、おなかの子を堕すという事は恐ろしくてできない自分、こんな姿を妹に見せたくはなかったが、同じようになって欲しくない姉。
「お姉ちゃんがお母さんたちに黙ってくれること、ありがとう、だから百合子はさやかお姉ちゃんの味方だから、絶対に味方だからね」
お姉ちゃん
お姉ちゃん
お姉ちゃん
なんて甘くかわいらしい言葉だろう、姉妹という関係は姉が思っていたよりずっと強いのだ、男を取られたくらいで おしまい、になんてぜったいにできない。
翌朝さやかはいつもどうり江戸蔵高校に登校し、途中ヒロヤと出会い挨拶を交わした、
「昨日のことで少しお話があるから、ヒロヤ君昼休みちょっと時間作ってね」
「う、うん」
いつもの優しい彼女ではなく、何かよそよそしい彼女に感じるものがある、すこし焦りながら拒否することができないひろやだった、
4限のチャイムが鳴ると、食事を済ます間もないうちに、ヒロヤの教室前にさやかが現れ、アイコンタクトをとるのだった、「視聴覚室で話しましょう」そっけなく言ってさっさと教室に向かう彼女の後をついていく彼氏である、
「な、なあ学校でヤルの?」
確かにそういうこともあったが、もう愛想などない彼女に気が付かない彼、どこにもある二人の世界だ、教室に誰もいないことを確認し扉を閉め、
「ハイッこれ」
紙袋をヒロヤに渡すさやか、黙って袋を受け取り中身を見たヒロヤが顔を赤くする、
「ちょっとナニコレ?」