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『MY PICTURE』
【大人 恋愛小説】

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MY PICTURE【真夜中のバーとダニエル】-3

「僕を夜中に呼び出した理由ですか?」
「ええ」
BGMの女性シンガーの歌声が止まり、壁際の男性がマスターに曲のリクエストをしているのがダンさん越しに見えた。
「そう。まぁ、それだけが理由じゃないけれど、ちょっと君と飲んでみたかったって感じかな」
「それなら次からはもう少し計画的にお願いしますよ」
ダンさんは、また、あははと快活に笑った。
「じゃあ、そろそろ出ましょう。詳しい話は、そうね、明後日午前10時頃、また改めて。構わない?マスター、代行運転手とタクシー呼んで」
どこまでもダンさんのペースで、物事は的確に進行していく。

タクシーが来るまでの間、またダンさんはとりとめの無い話をつづけた。
俺はただぼんやりと相槌を打っていた。楽しそうに動く真っ赤なルージュが綺麗だ。
「ね、さっき『次からは』って言ったってことは、また付き合ってくれるんだ?」
「まあ、ええ、俺でよければ」
タクシーが到着しましたよ、とマスターがダンさんに声をかけた。
ダンさんは常連らしく、ありがとー、と親しげに笑った。


「じゃあ明後日」
タクシーに乗り込むと、ダンさんは言った。
「それと、私はいつだって『計画的』よ」
それじゃあね、と意味深な言葉を言い残して、ダンさんを乗せたタクシーは去っていった。

夏の終りのほんのり冷たい夜風が、俺の伸びすぎた髪を撫でる。
前髪が目に入って痛い。明日は髪を切りに行ってこよう。きっと、明日には彼女が帰って来るだろう、と、ぼんやりと思った。

タクシーを見送って店に戻ると、BGMはルイ・アームストロングに変わっていた。


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