第二十章 不安(画像付)-6
『おじちゃんは、だれ・・・?』
幼い声が無邪気に尋ねていた。
口元を歪ませ笑っている男の顔が逆光の中で霞んで見えた。
(えっ・・・?)
心臓がドクンと脈打った。
香奈子の表情から笑顔が消える。
何かがおかしい。
説明のつかない違和感が沸き上がる。
『おじちゃんは・・・・だれ・・・?』
(誰なの・・・?)
少女の声に疑問が重なる。
濃い霧が晴れていくように記憶が徐々に蘇っていく。
(そういえば・・・)
昨日、誰かに会ったような気がする。
部屋を出て、応接間に向かった。
ドアを開けた瞬間、何か嫌な予感がした。
閉め切ったままの部屋はムッとした息苦しさに覆われている。
テーブルの上に飲みかけのコップが二つ置いたままになっていた。
(この部屋で・・・・)
何かがあったような気がするのだが、思い出せない。
灰皿にタバコの吸殻が何本も残っている。
焦げ臭い残り香に言い知れぬ不安を感じた。
『おじちゃんは、だれ・・・?』
少女の声が響く。
「ああ・・・・」
逆光で眩しかった顔が少しずつハッキリしてくる。
心臓の鼓動が激しく脈打ち始めた。
「この部屋で・・・わたし・・・」
香奈子の顔が恐怖に青ざめていく。
ソファーのかげに衣服を見つけた。
「こ、これは・・・」
手にとってみると、ブラウスは引き裂かれボタンも何個か取れていた。
「ああっ・・・」
突然、記憶が蘇ってきた。
夢の中で笑っていた男が正体を現したのだ。
「た、竹内・・・さん・・・」