愛が交わる場所で-1
牧田遥太は普段着慣れない白いガウン姿で、ラブホテルの一室のダブルベッドに腰掛けていた。
「(どうしてこうなった‥‥!?)」
遥太はダブルベッドの上に腰を下ろして頭を抱えている。
今から30分前。レジの会計の前に小夏に休憩にいい場所があると言われて、小夏の運転する車で向かった場所はラブホテルだった。
遥太は困惑のまま小夏によって受付を済まされると、この部屋まで手を引かれた。
小夏から先にシャワーを浴びるように言われると、遥太は戸惑うまま着てきた制服を脱いで浴室へと向かった。
正直、遥太の人生の中でこのシャワータイムほどリラックス出来ないことはなかった。
その後、浴室から部屋に戻って来ようとした遥太は濡れた体のままでは戻れず、備え付けのタオルでササッと拭いて戻って来た。
遥太が今着ている白いガウンは戻って来た際に小夏によって着せられた。お腹辺りに付いた紐も一緒に結んでくれた。
その小夏は今は遥太と入れ違いでシャワーを浴びている。
遥太は前に自分の夢でラブホテルの一室で小夏に誘惑される夢を観た。しかし、夢で見た部屋とはこの部屋は違う。
ダブルベッドに二つの枕自体は共通点だが、部屋がピンク色を基調として家具が配置されている。部屋の壁紙、ベッドの色、カーテン‥‥厳密には多少違いはあるのだが色としてはピンク色。
ついでに言えば、浴室の方もピンク色である。
おかげで遥太はピンク色の部屋から戻って来たというのに、またピンク色の部屋ということで視覚の色彩情報の無変化を味わっている。
彼の心は見知らぬラブホテルの一室に心ここにあらず、という感じだ。
浴室のドアが開いて、遥太はそちらに視線と意識を向ける。
小夏が身体にタオルを巻いて戻って来た。彼女のハニーブラウンのショートカットの髪は少々湿っている。
「お待たせ」
小夏は短くそう言って、遥太のすぐ隣に腰を下ろす。憧れの女性が戻って来たというのに、遥太は何も喋らなかった。
「‥‥遥太くんもしかして緊張してるの?私達って、知らない関係じゃないでしょ?」
小夏が笑みを浮かべながら尋ねる。
彼女が言うことは全くその通りなのだが、遥太が緊張しているのは小夏にではなく、この部屋そのものが原因なのであった。
「それはまぁそうなんですけど、この雰囲気がちょっと‥‥」
「初めて来たものだから、慣れない感じ?」
遥太は頷く。
「はい。小夏さんの部屋の方が落ち着きます」
「まぁ、そりゃキミからしたらいつもの場所の方がいいよね」
小夏は遥太の気持ちを理解しながら、「でもね」と続ける。
「いつも私の部屋でするワケじゃないから‥‥こういう所でも慣れないと、ね?」
それは今後も時々はホテルに呼び出す、という話なのだろうか。遥太は自分なりに彼女の意図を考えようとしたが、この雰囲気に視界が馴染まず、思考が定まらない。
その間に、小夏が遥太の白いガウンのお腹の結び目に手を伸ばす。
「あ、小夏さん‥‥」
遥太が気づく頃には、シュルっと結び目を解かれて自分の裸が露わになる。
「ドキドキしてるのは私も一緒。最も、私の方は期待値の方が大きいんだけどね」
そう言って小夏はダブルベッドから立ち上がると、自分の身体を隠している白いタオルをその場で脱ぎ捨てる。遥太にとっては見慣れた瀬尾小夏の裸。Hカップのバストを筆頭として、スタイルの良い体型。
遥太はその裸体を視界に入れると、自分の股間が反応するのを感じた。