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na〜アリサ
【片思い 恋愛小説】

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na〜アリサ-1

 ─あたしが好きになる人は、大抵あの女(ひと)を好きになる。

このジンクスは小さい頃からあたしを苦しめていて。
だからあたしは自分を守るために、その人を本当に好きになる前にあきらめるクセをつけた。

ずっとそれを守っていたのに、守っていたはずだったのに。
いつからだろう。自分の気持ちに蓋が出来なくなったのは…

「ありさ」

自分の名前を呼ばれた声に反応して、あたしは後ろを振り返る。
─と、あたしの視線の先には、12歳の頃から腐れ縁の男が立っていて。
この男、高橋明とはもうずっと一緒で。
あたしの苗字が高梨だから、中学の入学式であたしの次に明が呼ばれたのが、そもそもの始まりだった。
男だから女だからっていう意識が芽生える前からずっと友達だったから、大学生になった今でも、明はあたしに対して遠慮はしない。
もちろんあたしも明が男だから、なんて考えたことはない。

悪友で、お酒仲間で、相談相手で。
明にとってあたしはそんな存在のはず。
もう一つ付け加えるとしたなら、元カノの妹ってところかな?

「今日はどこ行く?」

明の沈んだ様子に気づかないフリをして、あたしは切り出す。
2人で飲みに行こうと誘われる日は、何か嫌なことがあった日で。
そんなときは何も聞かずに朝までとことん付き合うのがあたしの役割だった。

「道頓堀でいい?」

その答えから、今日は本当に潰れたい日なんだと感じる。
道頓堀は大学から歩いて15分くらいのところにある居酒屋で。
焼酎が安く飲めることで有名なお店だった。
顔色を変えずに頷くと、あたしたちは肩を並べて歩き出す。

─今日はどうしたの?嫌なことがあったんだったら全部聞くから言っちゃいなよ?
尋ねることのできない問いを真っ暗な空に浮かべてみる。
あたしからは何も聞かない。それがあたしの決めたルール。

焼酎のロックを立て続けにあおる明を見ていると、胸が苦しくなってきて。
側にいることしか出来ない自分が歯痒かった。
明はお酒が強いからめったなことじゃないと悪酔いはしない。
飲んでも飲んでも消化できない思いを振り切るように、明は首を振った。

そんな明を見ていたら、明と初めてサシで飲んだことを思い出す。
明とななちゃんが別れて、その一週間後に日本に帰ってきた明はボロボロで。
その時も、あたしはただ黙って側にいることしか出来なかった。

ななちゃんが大学3年生からカナダの大学に編入してから、長期の休みを向こうで過ごすのは、明の変わらない楽しみで。そのために日雇いのバイトをしてお金を貯めては、嬉しそうに発って行く明を見送るのがあたしの役割だった。


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