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na〜アリサ
【片思い 恋愛小説】

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na〜アリサ-2

あたしのお姉ちゃん(といっても年子だから学年は同じ)、高梨菜々子はスーパーウーマンで。
勉強をやらせたらコツコツと努力を積み重ね成果を出し、スポーツをやらせたら右に出るものはいない。性格は温厚で、見た目も凛とした美人の類に入る。
そんなスーパーウーマンななちゃんに、あえて欠点をあげるなら一直線すぎるところかな?
こうする!と決めたら必ずやり遂げるその性格は、ななちゃんの長所であり短所だった。

お姉ちゃんと一緒にいるとみんな、ななちゃんを選ぶのを分かっているから。
だからあたしはなるべくななちゃんと同じものを選ばないようにしていた。
同じ学校や、同じ趣味、同じ人を好きにならないように。

ななちゃんが留学したいと言い出したのは、高校2年生になった春のことだった。
もともと語学に興味があって、中学の頃からミッション系の私立学校に通っていたななちゃんは、学校の先生に短期の交換留学をしてみないか?と話を受けたらしくて。
女の子の単身旅行を心配した両親は、始め渋い顔をしていたけれど、ワガママを言ったことがなかったななちゃんの初めてのお願いだから…と言って最終的には折れてくれた。
その代わり、学校からの補助金で足りない費用は自分で何とかすることを交換条件として出した。
きっとそうすることで、お父さんとお母さんは、ななちゃんにあきらめて欲しかったんだと思う。
だけどななちゃんは、言われた次の日にはバイト先を決めてきて、一年後には無事にカナダへと旅立って行った。

「ひと目惚れしたかも。」
そうポツリと明が呟いたのは高校2年の夏のことで。
なかなか口を割らない明を問い詰めて聞き出すと、どうやらお相手は明の家の近くにあるコンビニでバイトをしている女子高生らしい。
「ぜってー来んなよ。」なんて言われて行かないヤツがいるんだろうか。
部活帰りの明の後をつけて友達みんなで連れ立って覗きに行くと、真っ赤な顔をしてスポーツドリンクを買う明が目に入った。
「うっわ明顔真っ赤じゃん。」
いっしょに見に行った男友達がはやしたてる。
「でも確かに美人じゃね?」
「明ああいうのがタイプだったんだ。」
好き勝手に言い始める友達を尻目に、あたしの目はレジを打つ女の人に釘付けだった。
「…お姉ちゃん。」
その一言でやかましく言い合っていたのがピタッと止まる。
「お姉ちゃん…ってありさの?」
うん。そう頷いてから何とか笑顔を作ると、今日は先に帰るね。と言って友達の輪を抜け出す。
やっぱり明もななちゃんを選んじゃったんだね。
みんなそうなんだって分かっていたつもりだったけど、それでもなんだか悲しかった。

それから明は毎日ななちゃんのコンビニに通っていたけど、明は話しかけられずにいて。
あたしはそれを見かねて、何度か2人の間を取り持とうか?と言ったんだけど、自分で何とかしたいからと言っていつも断られた。
結局明が話しかけられないまま、ななちゃんは1ヶ月の短期留学に行ってしまって。
留学から帰ってきても、ななちゃんは長期留学の資金を貯めたいから、と言ってバイトを続けていた。

ななちゃんにとって明が、毎日来てくれる高校生の男の子から、好意を持ってくれている男の子になったのは、ななちゃんは地元にある4年生の国立大学へ、あたしと明は県外の私立大学へと進学が決定した頃だった。
2人とも進路が決まったのだから遊びにでも行けばいいのに、お互い何を遠慮したのか、高校を卒業するまでメールのやり取りだけで終わった。
明は大学に入ったら遠距離になるのと、新しい環境に入ったら違う人を好きになるかもしれないと思ったみたいで、それ以上は踏み込むのをためらっているようだった。


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