麻衣ちゃんの性の悩み-5
麻衣ちゃんはもう、身体を半身琴美のほうにむけて、琴美の処女喪失トークに聞き入っている。もじもじさせていた指が、さっきより太腿のもっと身体側、麻衣ちゃんが穿いているちょっとタイトなカーキ色のパンツのジッパーのあたりに移動して、人差し指の先端だけがかすかにパンツの生地をこするように動いているのがテーブル越しに見える。え、麻衣ちゃんまさか。
「サイズもそこそこだったし、早く終わっちゃったから、あたしもあんまり痛いとかつらいとかはなかったなあ。もうちょっとやさしくしてよ、とか思ったもん終わってから。余裕あったんだよねえ」
ちら、と俺の顔を見てまたにや、と笑う。
「どう麻衣ちゃん、そんなおおげさな話でもないでしょ処女喪失。やっぱまだ怖い?」
麻衣ちゃんが一瞬うなずきかけて止まる。
「……っていうか……」
「ん?なんか悩みとか?」
麻衣ちゃんの指がまたもじもじを始める。いやもしかして、もじもじにかこつけてパンツの上からいじってないか麻衣ちゃん。
「……私、その……」
言い淀んで、ひさびさに俺の顔を見る。その瞳はうるうると潤んでいる。
「え、こいつ?大丈夫大丈夫、あたしも結構こいつとエロ話してさ、ちょっと相談にのってもらったりしたことあるから。変な気とか起こさないと思うから、大丈夫だよ」
それ麻衣ちゃんにバラすか、おい。
「で、なに、悩みは」
「……あの、その……あ、あそこ、の、ことなんですけど……」
どくん、と、胸が一発でかい鼓動を打つ。あそこ、って、あそこのことだよな。」
「うん、あそこがどうした?」
「あ、その……私、あそこを見られるのが、すっごく恥ずかしくって、その……」
「えーなんで?ん、まあそりゃあんまり人に見せるものじゃないから恥ずかしいは恥ずかしいとは思うけど、するときはそりゃ見られちゃうよどうしても」
そう言いながら琴美が意味ありげに俺の顔を見る。いや確かに彼女でもない琴美のおまんこ見たりそれで生抜きしたりたけどさ、あれ、お前がいきなりオナニーおっぱじめたりしたからだろそもそも。
「あの……私、たぶん……その、あそこの形とか色とか……へん、なんだと思って……だからあの、男の人が見たら、なんか、その、気持ち悪がられるんじゃないかなって……」
うつむいた麻衣ちゃんが途切れ途切れに言う。まさかこういう展開が来るとは思ってなかった俺の仮性包茎は、性的興奮よりも驚きのほうが大きいからかまだおとなしいままだ。
「え、麻衣ちゃん自分のおまんこがグロマンかもって思ってる?」
琴美の豪速球ストレートに、麻衣ちゃんは完全にうつむいてしまう。顔どころか首筋まで真っ赤になった麻衣ちゃんは、宮崎マンゴーソーダしか飲んでいないはずなのに琴美と同じくらいのフラッシング反応を示している。
「そんなの気にすることじゃないよ、おまんこってさ、人によって形も色ももろもろ違うんだし、自分で思ってるほどグロくなんかないって」
「……あと、その……」
消え入りそうな小さな声。
「……なんか、その、におい、とか……」
ぐっ、と、麻衣ちゃんがまた唾液を飲み込む。
「その、私のって、くさい、かな、って……そういうの嗅がれるの、やっぱりすごく、恥ずかしいです……だから……」
「うーん」
琴美が腕組みをする。
「あんたどうよ、女の子のおまんこ、グロいとか匂うとか、気にしたことある?」
あるわけねえだろ俺の大好物だし匂いが強いのはむしろ大歓迎だ、と、正直にはさすがに言えない。
「ああ、うん……気にしたことはない、な。それに、好きな女の子のだったら、むしろかわいく見えるんじゃねえのか普通」
「だよねえ。ほら麻衣ちゃん、男だってこう言ってるしさ」
「……はあ」
うーん、と、もう一度言って唇を尖らせた琴美は、ちら、と左手首の腕時計を見た。つられて俺も右上の壁にかかっている時計を見る。九時二十五分。
「麻衣ちゃん明日なんか予定ある?」
「え……や、ない、です」
顔を上げた麻衣ちゃんがきょとん、とした表情になる。
「じゃさ、あたしん家で続きしよう。なんなら麻衣ちゃんのおまんこ、本当にグロいかどうかあたしがチェックしてあげる」
え、と言いかけた麻衣ちゃんににっこりと笑いかけ、そのまま俺のほうを向いた琴美が、ややアルコール臭が薄くなった息を俺の鼻腔に届けながら言った。
「あんたも来るでしょ。まだ時間そんなに遅くないから、つきあいなよ」