第十六章 視線-6
「近頃じゃあ、
セックスレスの夫婦も珍しくないという・・・」
睨みつける視線が、香奈子から力を奪ってしまう。
「あ・・・あ・・あ・・・」
まるで金縛りにでもあったように動けなかった。
大きな身体を割り込むようにソファーの端に座った。
「キャッ・・・」
クッションが大きく揺れてバランスを失った香奈子の腕を、大きな手が握った。
「い、いやっ・・・」
反射的に身をよじるのだが、強い力に振りほどく事は出来なかった。
「初めて会った時から・・・」
男は身体を押し付けるように近づきながら呟いている。
「俺は・・・・」
ヤニ臭い息が香奈子の鼻腔を刺激し、恐怖を増幅させる。
「あんたが好きだった・・・」
脂ぎった手が腕を掴んでいる。
「な、何をするの?
や、やめてくださいっ・・・」
おぞましさに鳥肌が立つ。
「ふざけないでっ・・・」
必死に振りほどこうとするのだが、どうしても離すことが出来ない。