急接近-8
「お待たせしましたー。」
彩乃が水とおしぼりを運んで来た。
「ありがとうございます。」
「じゃあ決まったら呼んでね。」
「はい♪」
彩乃は戻りぎわにまた彰をチラッと見て微笑した。
「??(何だろう…)」
意味ありげな微笑が気になって仕方がなかった。
「あ、これメニューです。」
「あ、うん…」
メニューを広げると、ハンバーグがメインの店のようだ。他にはスパゲッティ類のメニューが多い。完全にガッツリ系ではないが、確かにどれも美味そうだ。
「私は4種のチーズハンバーグが好きなんです。それにハーフライスとハーフパスタがいつもの定番なんです。」
「そうなんだ。美味そうだね。」
「もーこのチーズとデミグラスソースの相性がバツグンで♪あと明太マヨスパゲッティも超美味しいんです♪」
会社ではあまり感情を爆発させる事もなく、大人しくふんわりした雰囲気の萌香だが、目の前で感情豊かな表情を浮かべる萌香にまた宗をズキュンズキュン撃たれる。
「じゃあ俺も同じのにしようかな。」
「ホントですか?でも男の人じゃあ少し物足りないかもしれませんよ?」
「いや、俺、そんなに食べる方じゃないし、それに同じの食べた方が萌香ちゃんが美味しいって気持ち、分かりやすいから♪」
「ホントですか?じゃあ同じの頼みますね♪」
「うん。」
萌香が嬉しそうにしたのは、同じものを彰も頼んだ事だけではない。僕から俺に変わったのも嬉しくなった理由だった。自分に対して警戒心を解いてくれたようで嬉しかった。
彩乃が注文わ受けに来た。
「畏まりましたー、ンフッ、2人とも同じものね♪」
「はい…」
照れる萌香に彩乃が言う。
「やっぱり素敵なネックレスね♪」
「あ、はい…」
「良く似合ってるよ♪」
そう言って萌香にニコッと笑った後、チラッと彰を見る。
「??」
いちいち自分に視線を送る意味が分からないが、少なくとも一回はあのネックレスをつけてこの店に来たと言う事だ。お気に入りの店に自分がプレゼントしたネックレスをして食事をしてくれた事が彰には嬉しくてたまらなかった。
「名前の通り、まるで森の中で食事するみたいだね。何か癒されるー。」
「でしょ♪ホント、お気に入りなんです♪」
「ホント、いいトコ。」
お気に入りの店を褒められて、萌香は嬉しそうに笑った。