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魔女のレシピ ナイトメアの壺
【ファンタジー 官能小説】

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花咲く頃-1

花にも魔法があるのだろうか‥

ペントハウスの入口に枯れたワスレナ草。
男は、私の胸に手をやりながら、それを踏みつけた。
ドアを閉めるなり、上着を剥ぎ取ると、ベッドへと追い詰める。
押し倒し、パンティーをぬがしそこをまさぐる。
そして、そそくさと突っ込んだ。
私は喘いでみせる。 ‥そう、見せている。
私に入れたかっただけ? これも愛なんだと思い込もうとした。
男はひと突きごとに はっ はっ と息を吐く。
キスする口に誠意の言葉はないの?
乳房を揉む手に、心をつかむ気はないの?
子宮に入れるものに、未来は託せないの?
私にも動けといらだたしげに腰を揺する。 だが、未だにひと言もない。
穴に入れたかっただけなんだ。
だから、一心に突き動かしている。
「ねえ‥」
「クウゥ」 おしりをわしづかみに動きを速める。
突き動かされて、出されて、終わり。
私の穴である必要はあったの?
「あのね‥」
その口に、私の愛液と精液の混ざったものをくわえさせられた。
舌でキレイにさせる。
やっぱり、穴でよかったんだ。
だからその後は、「じゃあな」で終わり。
穴は、「へえ」とだけ言った。

すがって『ねえ聞いて』と、言うか。    ≪その価値があるの≫
「なんだよ」
肩を抱き『聞きたいでしょ』と、惑わせるか。≪それで何が変わるの≫
「もういい」
見下ろして『聞き逃すな』と、呪をかけるか。≪それで何が欲しいの≫
「帰れよ」
男の声が聞こえる
それでも、 「私はただの穴じゃない」 つぶやく。
じゃあ、私は何なのだろう。
冷たい服を着る。

私に帰れるところはなかった。

母は名士の名につられて嫁いだ。
でもその夫と共にあえなく事故で逝ってしまった。
それからだ、
保護者となった義理の兄姉が私を物のように使い始めた。
「父は下半身の世話をさせるために、あなたの母をそばに置いたのだよ」 「お前にそれを継がさせてあげるわ」兄、姉が言った。
それからは、生活も、行動も体も、自分のものではなくなった。
情けなくて、腹が立って庭園へ飛び出した。そこにはキリンにクマに恐竜がいた。
見習い庭師が私のために、こっそり木を刈り込んで作ってくれた動物たち。私だけの友達だった。
そこへ入ろうとすると、その庭師が両手を広げてふさぐ。
「そこをどいてよ」
「逃げ込んでも、私が立っていたなら、閉じ込められるんだよ」どいてはくれない。
「飛びこんで押しのけてもいい、すり抜けていってもいい」
何度も押し戻されてから、「さあ、明日はもっとお強くなりなさい」と、カモミールを渡して、ゆるしてくれた。
そっと花言葉を調べてみたことがある。『逆境に耐える』とあった。
カモミールを花瓶に挿しておいた。それはいつしか枯れ、メイドに捨てられていた。

今では庭師の横をさっとすり抜けて、入れるようになった。
すると「賞品です」と、バラの花をくれた。
「なんのつもりよ」投げ返した。
庭師はそれを受け止め、手から血をにじませた。
「こんなのは慣れてますよ」傷をなめる。
「へたくそ庭師」木陰へ隠れた。
その前日、汚された私。
兄に「抱かれて来い」と言われ、知らない人に、犯されに行った。
この性器ですら私のものではない。そんな者になぜ赤いバラを持たせるの。
「あなたに私のことなんかわからない」 捨て台詞を残して園を飛び出した。
体を引きずって街をうろついた。
「ねえ、一杯おごってくださらない」
知らない人とでも話せる魔法の言葉。
その後のセックスは、流れだったのか、対価だったのか。
肉の穴は埋められた。でも、それだけだった。
だから「へえ」で終わり。

出て来たマンションの階段に、いがらっぽいつばを吐く。
そこら中に『不信』を知らせるラベンダーの花が散らばっている。
どれだけの人がこれを捨てたのだろう。
隣にも、その隣にも同じようなマンションがそそり立つ。
ビルの谷間を通り抜けた。
庭師がいた。 道をふさぐように手を広げ、立っている。
私は笑って、「捕まえたら、抱けるわよ」 ≪どうせあなたも、私に入れたいだけなんでしょ、どうして押し倒さないの≫
両手を広げて抱きつくように飛び出した。 そしてフェイントをかけ、避けると、それを突破した。
庭師は振り返ると、「賞品です」 白いナナカマドの花をくれた。
庭師にいら立つ。
花言葉のように、『見守られる』べきものを、私は持っていなかった。「やめて、化粧がだいなしよ」
私の胸に憐れみの花を飾らないで。
白い花をすてた。
「私には魔法の言葉があるの、それさえあればやっていけるわ」 つっぱねた私は、いだいてくれる者がいるから、突っぱねられるのだとは、考えたくなかった。
そして、この人だけがいつも、飛びこむのか、避けるのか、選択肢をくれていた。
「どんな花もいつかは枯れます」
「枯れたら、どうなるの」
「どんな花でも、どこかに咲いています」 路面に落ちた花を見ている。
「へえ」それしか言えない自分がいた。
「ナナカマドの花がいやなら、あなたが他の花をさがせばいいんですよ」
私はいつもフェイントをかけ、この人の横をすり抜けていた。
飛びこんで押しのけられるか試したくなった。
突っ込んでいった。
「賞品よ、一杯おごってあげる」私の知っている場所はここだけだった。
明日、この人は
どんな花をくださるのだろう。


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