愛する女の為に-2
一通り新作を試着、お披露目をした後、席に着く社員達。
「今回の新作はなかなかいいのが揃ってるから、どんどん推して売り上げ伸ばしたいと思うの。そこでこの新作をより魅力的に見せる為のアイデアを出して欲しいのよね。特に告知も踏まえてホームページは思い切りリニューアルしたいなって。井上君、暫く忙しくなるけど平気?」
都姫が彰に聞いた。
「はい。頑張ります。」
「みんなも協力してあげてね?」
「はい。」
そこまで協力する気はないが、取り敢えず返事だけはする。そこで夕梨花がある提案をする。
「井上くんだけじゃ大変だから、萌香ちゃん、暫く手伝ってあげてくれないかな??」
思いもしていなかった話に萌香は驚く。
「え?私がですか…?私で良ければ…」
嫌なのかな?と思いきやすんなり受諾した萌香が意外に思えた。
「萌香ちゃんもそろそろ遠慮せずに自分の意見をどんどん言っていかなきゃね。ああしたい、こうしたらいいんじゃないかってのをどんどん井上くんに提案してみなよ。自分の意見が採用された時の喜び、知って欲しいな♪」
「は、はい、頑張ります。い、井上さん…、宜しくお願いします。」
頭を下げる萌香に、
「こ、こちらこそ…」
と、照れながら頭を下げた彰だったが、これから萌香と一緒に仕事が出来るかと思うとドキドキしてしまう。
「じゃあ5月、6月、7月は売り上げ120%目指して頑張りましょう!」
「はい!」
都姫の掲げた目標に向かい一致団結する。スタッフは解散したが、彰と萌香だけ残るように言われた。都姫は2人を前にして言った。
「席が離れてては連携が速やかに出来ないだろうから、萌香ちゃん、井上くんの隣に席を移動した方がいいと思うんだけど、どう?」
きっと嫌がるんだろうなと思っていた彰だが、萌香はすんなりと、
「そうですね、分かりました」
と答えた。
(ま、マジ!?萌香ちゃんと隣同士!?)
緊張してしまったのは彰の方だった。まさか萌香と隣になるとは思ってもいなかった彰は、どちらかと言うと怖くなってしまう。
「じゃあ井上くん、机の引越し、手伝ってあげて?」
「は、はい…」
2人はオフィスに戻り席を移動する。
「あの、邪魔しないよう気をつけますので、宜しくお願いします。」
「あ、こちらこそ…」
隣に座る萌香との距離は50センチ以内。体温さえ伝わって来るかと思うほどの近さに彰は感じるのであった。