第十四章 媚薬-4
「どうも、すみません・・・」
既に火をつけていたタバコを持つ男は、満足そうに煙を吐いている。
ムッとした顔を隠すためもあって、香奈子はグラスを口に運んだ。
男への怒りで喉が渇いていたのか、冷たい感触に半分程を一気に飲んでしまった。
(フフフ・・・)
ゴクゴクと鳴ならす喉を見ながら竹内は不敵な笑みを浮かべている。
いつもながらの美しい顔立ちが、幾分疲れて見えた。
昨夜眠れなかったのだろうか、目の下に薄っすら影が残っている。
それもそのはずだった。
香奈子は薬を飲まされていたのだ。
強烈な媚薬は異常な興奮を呼び、身体を熱く火照らせる。
それを静めるには激しいセックスをする以外、方法はないのだから。
香奈子と圭子が何時も飲んでいるレモンティーにも同じく含まれている。
最近、変調を訴える香奈子の心配は当たっていた。
ごく少量ではあるが、媚薬が混ざっていたのである。
麻薬に近いもので大量に飲むと幻覚症状を起こすほどの強烈な成分をもっている。
当然の事ながら、政府の認可はおりていない。
表立っては売れない商品なのである。
能力が衰えた中高年に評判が良く、口コミとねずみ講によってかなり売れていたのだ。
秘密クラブではこの薬を混ぜた飲み物を出し、客の興奮を誘っている。
ショーに出る女達も飲まされ、淫靡な痴態を惜しげもなく晒しているのだった。
それを二人が飲んでいる。
効果が現れているのが竹内には手に取るように分かっていた。
香奈子も圭子も、目が潤みがちに妙に艶めいてきたように見える。