「会社の上司と妻」-14
これ以上、綾子と部長との肉体関係を続けさせると、綾子が自分とのセックスに満足できなくなるのではないか、という不安もある。それに、綾子がもし部長の子を妊娠してしまったら、家庭が崩壊するだろう。
しかしその日、健一は近藤に「もうこんなことは、やめましょう」とは言い出せなかった。そして帰宅後。娘が就寝したあと、リビングで綾子とお酒を飲みながら、話を切り出した。
「綾子・・。もう僕の浮気が会社にバレてもいいから、部長に従うのはやめよう。ごめん・・。最悪、会社をクビになったとしても、すぐに次の職場を探すから・・」
「心配してくれてありがとう、健一さん。でもね・・、部長があなたの昇進も約束してくれたわ。私は大丈夫だから、約束の1ヶ月は続けましょう」
「綾子・・、昇進なんかもういいよ・・。それよりすごく・・、心配なんだ・・。このままだと・・、綾子が部長に取られてしまうんじゃないかって・・。ほら、部長ってすごい精力だろ? だから・・」
「大丈夫。心配しないで・・。確かにあのエロ部長の精力はビックリしたけど、わたしの手と口で全部絞り出してやるんだから」
「綾子・・、頼む・・。せ・・、セックスだけは・・。部長とセックスだけは、しないで欲しいんだ・・。無理なお願いでごめん・・」
「健一さん・・。それだけは絶対にしないわ。約束する。ほら、私って昔からセックスはそんなに好きじゃないでしょ。だから心配しないで。ね?」
「あ、ありがとう・・、綾子・・」
そしてついに、約束の水曜日を迎えた。綾子は娘を21時過ぎに寝かせると、そのことを夫に連絡した。そして、すぐに健一が近藤を連れて帰ってきた。綾子がお酒とつまみを用意し、3人で談笑したあと、先週と同じように近藤がシャワーを浴びにいった。
リビングに残った夫婦のあいだに、なんとも言えない緊張感が流れる。健一は水を用意すると言って、台所のほうへ歩いて行った。
健一はここまできて、まだ迷っていた。部長に言われた通り、またもや媚薬を妻の飲み物に仕込むべきか、それとも何もしないべきか・・。健一は、ポケットに忍ばせている媚薬入りの小瓶をギュッと握りしめていた。
リビングに戻った健一は、水の入ったグラスを綾子に手渡し、自分も同じように水を飲んだ。綾子は当然何も疑うことなく、コップ一杯の水をすべて飲み干した。
「綾子、じゃあ僕は2階に行ってるから・・。もし何か強引にされたら、すぐに呼んで。急いで降りてくるから」
「うん。分かった。あのね、健一さん・・。何回も念押ししちゃって変だと思われるかもだけど・・。ぜったいに途中で下には降りてこないで。それだけは約束して。お願い。部長と一緒にいるところを・・、見られたくないの・・。終わったら連絡するから」
「あ、ああ・・。分かってるよ。約束する。先週は先に寝ちゃってごめん・・。今日は連絡あるまで、起きてるようにするから」
健一はそう言い残し、2階へと上がっていった。すると、階段を登る途中で近藤がシャワーを浴び終えて、リビングに戻ってきた気配がした。健一はそのまま自室に入ると、ゆっくりと扉を閉めた。あの性欲旺盛な上司と、媚薬をタップリ飲んだ妻を階下に残したまま。
時刻は22時を過ぎようとしていた。綾子と部長が2人だけになってから、30分くらい経過したはずだ。セックスだけはしないでくれ、と妻に懇願した健一だったが、その大事な妻とあの部長が交わっている姿をどうしても見たい、という欲望が混在し、先週よりも多めに媚薬を入れてしまった。
2階の部屋にいると、1階にある和室の声は一切聞こえてこない。健一はこの数日のあいだ、和室に盗聴器を仕込むべきか悩んでいた。盗聴器を仕込めば、2人の会話をより詳細に知ることができる。
しかし先週、「障子越しに妻の喘ぎ声を聞く」という、特殊な快楽を体験してしまったせいもあり、やはり今夜も足音を忍ばせて、直接覗きに行こうと決めた。
そして、時刻が22時30分を過ぎた頃。健一はそっと部屋を抜け出した。2人っきりになって、1時間くらい経過している。
もしかすると、もうセックスが始まっているかもしれない。健一は、はやる気持ちを抑えながら、ゆっくりと階段を降りていった。
真っ暗な階下に降り、和室のほうに目を向ける。和室の障子越しに、明かりが見える。その明かりは先週よりもずっと明るいように感じた。ゆっくりと和室に近づいて立ち止まり、中から聞こえてくる音に神経を集中させる。
まず聞こえたのは、おそらく妻の声だと思うが、「ん〜!」といったような声だ。何かで口を塞がれているのか、はっきりとした声になっていない。
すると、健一の耳に聞き慣れない音が聞こえてきた。ジョリッ、ジョリッっという音だ。以前はヒゲを電動髭剃り機ではなく、カミソリで切っていたこともあり、なんとなくそれに似たような音に思える。
すると、近藤の「動くなよ」という、低い声が聞こえてきた。綾子のほうは、うめき声しか聞こえないが、近藤のセリフを聞いているうちに、徐々に中の状況が分かってきた。
おそらく綾子は、タオルか何かで猿ぐつわをさせられ、声を出せない状況のようだ。そしてどうやら両手を縛られていて、自由に身動きができない。
そして近藤のほうは、綾子の股間にカミソリを這わせ、そこに生えている毛を、すべて剃り落としている最中のようだ。
健一は自分が想像していた状況とあまりにも違う事態に直面し、その場からまったく動けずにいた。
(こ、このスケベオヤジが・・。他人の妻になんてことをするんだよ・・。あ、綾子・・。僕は・・、どうしたらいいんだ・・? た・・、助けたほうがいいのか・・?)