第十三章 竹内-2
竹内は高校を卒業して直ぐに就職した。
しかし、勤め先の先輩にそそのかされた挙句、使い込みの罪をかぶせられ、会社を首になる。
一度、転がり落ちた人生のツキは歯止めがきかず職を転々としながら、いたずらに年齢を重ねていったのである。
金が無い醜男に彼女が出来る筈も無く、小銭を使って女を買う位が関の山であった。
一方、晴彦は有名私立大学に入学し楽しい日々を送っていた。
たまに二人が会うと、懐かしさに晴彦が誘い飲み明かす夜もあったが竹内にとっては屈辱以外の何物でもなかった。
誘うのは何時も晴彦の方で、優越感を覚える自分と会いたかったのだと竹内は勘ぐる程、気前良くおごってくれた。
豪華なレストランで会った時等は楽しみの無い日々の苦しい生活から卑屈な笑みを浮かべ、普段は口に出来ないごちそうを腹いっぱい詰め込んでしまう。
友の何不自由無い境遇は羨ましさを超え、強烈なねたみとして心に根付いていた。
しかし、表面上は友のまま二人は交際を続けたいった。
(いつか、こいつに・・・)
屈折した感情は心に粘りついたまま、ゴミのように腐食していく。
空虚な野望は具体的なイメージも無いままにくすぶり続けていたのだ。
出口の見えない息苦しい状況だったが、ある出来事で人生が一変する。
二人が二十三歳になった頃、竹内は晴彦に呼び出された。
『今度、結婚する事になったんだ・・・』
紹介された少女は、晴彦の隣りで恥ずかしそうに俯いていた。