女らしく【16】『思いと想いと告白』-1
あの夜、あの祭の夜、あの夜の教室で…稲荷はオレを好きだと言った…
『今すぐ好きになってくれとは言わない。だが、明後日の土曜、俺と一緒に過ごしてほしい』
とも言った…
大和は何も言わなかった…
何も言わずあの場所を立ち去っていった…
オレも何も言えなかった…
次の日。大和と話をしようにも何かしらの理由で断られてしまっていた…
このことは奏だけには話した。奏以外には話していない…ミリィにも撫子さんにも…
話をして大和との関係がこれ以上こじれるのが嫌だったから…
大和の側にいられなくなるのが怖かったから…
『貴女の気持ちを素直に伝えるべきですわ、稲荷だけじゃなく大和にも…
ワタクシが言えるのはこれぐらいですわね…』
奏は静かに言った…
そして土曜日、今日…オレは決心をした…
「マコト、こっちだ」
昼過ぎ、稲荷は駅前のモニュメントの前に腰掛けて、オレを待っていた。
「ちょっと歩きながら買い物でもしようか…」
立上がり、スラッとした長身を見せる。
オレも無言でその後に続いた。
いつ話を切り出そうか…
どうやって話をすればいいのか…
分かんなかった…
その後はブラブラと稲荷と二人で喋ることもせず、街を歩き回った。
いや、何か喋ったのかもしれないが、オレの頭はこれからのことや稲荷のこと…それに大和のことなど、いろんな事でいっぱいでよく覚えていなかった…
「話…あるんだろ…」
日も暮れかけた頃、公園の前で突然稲荷が言った…
「うん…」
「俺ももう少し話したいことがある…マコトに聞いてもらいたい…」
稲荷はただ正面の公園を見つめたまま言った。
「分かった…その代わり、オレの話も聞いてほしい」
橙色に染まった公園はすでに誰も遊んではいなかった。
寂しさの様な、切なさの様なものが胸に込み上げてくる…