続・風祭〜reunion〜-8
(遂に、言ってしまった――――――――)
小谷の姿が消えた部屋の中で、
三重子は1人自分の発した言葉を頭の中で反芻していた。
小谷と2人きりになって一夜を過ごすことがどのような結果をもたらすか、
ここまでの間何度も脳裏に浮かべたものだ。
或いは拍子抜けするくらい何事もなく夜明けを迎えるかもしれない。
だが先程までの会話の中で自分同様に核心となる話題を避け続け、
三重子の提案に対し内心の決意を見せた小谷の姿を思い起こすと、
何事もなく終わるとは到底考えられない。
むしろストレートにはっきり告白し即座に行動に移せば、互いにここまで遠慮することはなかっただろう。
だが三重子に対する配慮と自身の性格が小谷にそのような行動をとらせなかったことが、
逆に三重子にとって小谷の存在を特別なものにしていた。
(もし、もし・・・・・そうなったなら・・・・)
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―――――――小谷が自分の荷物を用意された寝室に運び込んでからリビングに戻ってきた時、
三重子はキッチンで2人分の夕食を準備している最中だった。
「良い匂いですね・・・・」
「あまり凝ったものは作れませんから、大したものは出せませんが」
「いやいや、空腹の身としては温かい料理があるだけでありがたいですよ・・・・そういえば、三重子さんの手料理をいただくのは今夜が初めてになりますね」
微笑みを絶やさずダイニングルームに向かう小谷の言葉に、一瞬三重子の手の動きが止まった。
確かに自らの手料理を小谷に振る舞うのは初めてだが、こうして相手の口から言葉として発せられると、
自分と小谷の関係についてより近づいたということを意識せざるを得ない。
こんなことは今夜だけなのか、それとも今後にも続いていくことなのか、と――――――――