続・風祭〜reunion〜-5
ここで屋外から聞こえてきた車のエンジン音に三重子ははっと耳を済ませる。
エンジン音は山荘前に来て止まり、続いてフロントドアを閉める音、
そして砂利や地面を踏みしめてくる人の足音が風が窓ガラスにぶつかる音に混じって微かに聞こえてきた。
ソファから腰を上げた三重子の足が自然と山荘の入り口に向かい、ドアの手前に至った時にちょうど呼び鈴が鳴った。
心なしか逸る気持ちを抑えつつ、三重子は深呼吸して呼吸を整え、内側からドアを開いた。
三重子にとっては過去の記憶通りの姿で小谷がそこに立っていた。
グレイチェックの上着にグレーのスラックス。ネクタイは身につけておらず、白のワイシャツという出で立ちだった。右手には花束を携えている。
髪を整えているものの、最後に目にした時より肌が陽に焼けて黒くなっていることが小谷の精悍さをより際立たせていた。
「お久しぶりです。今日は遅くなってしまい申し訳ありません」
「お昼を過ぎてもお越しになられなかったので、何かあったのではと心配しておりましたわ」
小谷自身の元気な姿を間近にすることで、彼を心配していた旨を言葉にする三重子の心中にゆっくりと安堵感が広がっていく。
「小谷さんには今日お忙しい中をわざわざ遠くまで足を運んでいただいて・・・」
「いえ、お気になさらず・・・今日はお見舞いということでもあるので、月並みなものですがお持ちしました」
彼が差し出してきた花束には、かつて三重子のもとを1人で訪れた時と同様に薔薇、金魚草、プリージアといった様々な花が見映え良く収まっていた。
「自然豊かな山荘に花というのもどうかと思いましたが、是非静養の中での慰めになればと思いまして」
「お心遣いありがとうございます・・・さ、立ち話も何ですから、どうぞ入っていらして」
三重子に促される形で小谷も山荘のドアをくぐった。