続・風祭〜reunion〜-3
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――――――そして2日後、
いつもより早く日の出前の薄明の時間に三重子は目を覚ました。
壁掛け時計の時間を確認した後に身体を起こしベットを抜け出す。
寝室から浴室へと移動し、熱いシャワーを頭から浴びて眠気を一掃する。
昨晩はいつもよりも早い時間にベットに入ったこともあり、睡眠は十分に取れていた。
タオルで身体を拭く間、何気なく洗面台の鏡に映る自分の裸体に目をやる。
肌艶や張り・弛み、そして身体の崩れがないかを確認する中で誰の目を気にしているのかに思い至った時、三重子は途端に気恥ずかしさを覚え思わずタオルで顔を覆ってしまう。
バスローブに着替えた後浴室を出てからは、いつもの手軽な朝食を済ませ淹れたてのコーヒーをゆっくり味わって一息つく。
気分を切り換えた三重子は作業着に着替え山荘内の掃除に取りかかった。
箱根という立地条件と加賀の交遊関係も踏まえた広さ・規模の山荘の掃除はこれまで加賀の関係者・大体複数人で行っていた。
その為三重子1人での清掃はなかなかの重労働ではある。
それでも山荘内で使用するであろう区画を重点に昼前までに掃き掃除や拭き掃除を終え、そのままゲストルームの1つも宿泊可能な状態に整えた。
昼過ぎに来訪する小谷がいつまで山荘に滞在するのか、細かい内容を電話で話したわけではない。
だが三重子はもしかしたら、というある種の予感と共にシーツを張り、加賀の使用していた寝巻きまで枕下に置いた。
―――――――小谷と二人きりで逢う。
それも夫と離婚してから初めて。
一通りの作業を終えキッチンで昼食の準備をする傍ら、三重子は一昨日久しぶりに耳にした小谷の言葉の中に、今まで三重子と話した時には感じさせなかった“想い”がはっきりと浮かび上がっていたことに気づいていた。
これまで彼女に夫がいた時には微かにしか見せようとしなかったもの。
今の小谷には妻は亡く、三重子にも離婚という形で夫はいない。
様々な悲劇を伴いながらも、互いを隔てていた壁が取り払われたからこそ、
小谷は“1人の男”として三重子に逢おうとしているのだ―――――――――
(・・・・・・・)
三重子にとって、今までの人生でここまで“特定の男”の存在を意識するのは初めてだった。
それは元夫との出逢いや結婚に至る過程でも感じられなかった感覚。
一昨日に麻子から三重子にかけられた別れ際の言葉が小谷の存在を意識させ、彼女の背を押したことには違いない。
(・・・・・・)
次第に高まってきた胸の動悸を抑えるつもりで、三重子は目の前の調理に集中した。