女らしく【15】『夜と舞台と陰の祭』-1
夜の帳が静かに下りた。
時刻は7時。
辺りは暗く、闇が覆っている。
しかし、この学園の広い校庭の真ん中、この日の為だけに造られた円形の闘技場だけは煌々と光が射している。
『只今より、戦霊武闘会を開催する』
後藤教頭の宣言がマイクにより、会場全体に響き渡る。
「わおっ!あのヒトカッコいいじゃん♪」
階段状の客席に座った夢が隣りではしゃいでいる。
「で、戦霊武闘会って何?」
「戦霊武闘会、ワタクシ達は裏百鬼夜行祭と呼んでますわ」
「だから、それは何って聞いてるんじゃない!」
「裏百鬼夜行祭ってのは簡単に言えば、オレ達の体育祭。年に一度、自分達の実力を測るのと式のオーディションを兼ねて格闘大会を開くんだ」
舞台の上では、すでに第一試合が始まろうとしている。
「へえ、天下一武闘会みたいなもん?」
「そんな感じだ」
まあ…流石に気功波を出す奴はいないが…
「その前年度優勝者が夢の隣りに座ってますわ」
「マジで!?」
仕方ないだろ…冗談で出たら優勝しちまったんだから…
「しかも、決勝はマコト対大和でしたわ」
「何その、『愛し合うのに戦わなくてはならない二人…』みたいな設定は…で、どんな感じだったの?」
「マコトの圧勝、大和の初撃を躱して、鳩尾に容赦の無い蹴り。それでリングアウトで勝利ですわ」
「うわぁ…えげつなっ…愛してるんじゃないの?」
うるせえな…愛ゆえにリングアウトだよ…
大和にも余分な怪我させたくなかったし…
「それより始まるぞ」
中央の舞台に二つの影が現れた。
一つはヒトの身体に鴉の顔と翼を持った、鴉天狗。
もう一つは小さな黒猫…って、昼間のケットシーじゃないか。
「これってルールは?」
「殺しと再起不能にする以外なら何でも有り。どっちかが立てなくなるか、ギブアップするか、リングアウトしたら終わり」
舞台上で鴉天狗が杖を構えた。
「ふふっ…我が剣捌きを味わうがいいにゃ!」
ぶかぶかの羽付き飾り帽を被り、腰には剣が提げられている。
「いくにゃ!」
黒猫は鞘から剣を抜き払った!…ってアレ?
会場中が呆気にとられている。
鞘から出てきたのは、鋭利な刃ではなく、毛虫みたいなフサフサが先端についた棒…
「間違えたにゃああ!」
響き渡るケットシーの悲鳴…
フヨフヨと揺れるねこじゃらし…