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女らしく
【コメディ 恋愛小説】

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女らしく【15】『夜と舞台と陰の祭』-4

「大丈夫です!話がしたくなったらマコトの携帯にかけるんで♪とにかく、私のことよろしくお願いします!」

そう出られても…

「そろそろ始まりますわ。行きますわよ、二人共」
「ああ、頑張れよ!応援してるからな♪稲荷なんかに負けんなよ?」
「稲荷君!頑張ってね♪私がついてるから大和君なんかに負けないでよ♪」

そう言って控え室を後にした。


「おい!九条」

3人が出て行った後、稲荷が怒気を孕んだ声で呼び掛けた。

「何だ?」
「お前はそれでやるつもりか?」

大和の腰に提げられている模造刀を見て言った。

「ああ、そのつもりだ」
「ナメてんのか?前みたいに真剣でやれ!」
「ナメてなんかいない。第一、これは殺す為の試合じゃない」
「甘すぎるな…」

稲荷は掃き捨てる様に言い放った。

「一言だけ言っておく」

大和に歩み寄りながら、擦れ違いざまに言った。

「テメェじゃマコトは守れねえ…」

それだけを言い、そのまま部屋を出ていった。

後には大和が一人、虚空を仰いでいた。



「まだかな、まだかな♪」
「落ち着けよ…」
「だって、実物はもっとかっこよかったんだもん♪あっ、始まった!」

舞台の両端から大和と稲荷が現れた。

二人が静かに舞台に上がると周囲の空気が変わった。

ざわめきが次第に小さくなり、完全に消え去った。

静寂の中、カチャリと大和の刀が鍔鳴りした。

その瞬間、稲荷が走り、大和に向け鋭い中段蹴りを放った。

大和はその蹴りを躱して、刀を横に振った。
残像が銀の扇を形作り、稲荷の首筋を狙う。

稲荷の無理な体勢では躱すのが不可能だと思われた。
しかし、稲荷は己の姿を元の狐へと戻し、剣撃を回避した。

その姿のまま飛び掛かり、大和の身体に鋭利な牙を突き立てようとする。

刀は間に合わず、大和は鞘を引き抜き、ギリギリのところで牙を防いだ。

そこから蹴りを繰り出し、稲荷の身体が宙に舞った。

決まったかに思えた一撃。だが、稲荷は空中で身を翻すと何事も無かったかの様に着地した。
どうやら瞬間的に身体を後ろに逸らし、衝撃を緩和した様だ。


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