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出会い
【ガールズ 恋愛小説】

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揺らぎ-2

『みんなが知っての通り来週はいよいよ大会です。選手は二年生全員。一年生は補欠と補助です。詳しいことは後日プリントで配るから、それを読んでね。じゃあ。今日は解散です。お疲れさまでした』
 解散の声がかかるとそれぞればらけていく。
 あたしも部室に向かおうとすると、肩に手が乗ったのを感じた。千鶴だ。
『千鶴。どうしたの?』
『まあ、特に無いんだけどさ。大会、頑張ろうね。』 あたしは千鶴の顔を見て思った。千鶴は部長になって少なからず緊張していた。誰よりも部活を考えている千鶴だからこそだろう。
『うん。わかった』
 あたしは下手にことばをかけてあげるよりも、大会で成績をあげることで千鶴を安心させてあげようと思った。
 思った筈なのに、千鶴が口にした言葉は心底意外なものだった。
『ところで涼子ちゃんに言ったの?』
 言ったって何を?何故に涼子ちゃんの名前が?そのときのあたしはとてつもなく阿呆な顔をしていただろう。
『その様子じゃ言ってなかったのね。はああ。せっかく二人っきりにしてあげたっていうのに。』
『千鶴。あたしなんのことだかさっぱり』
 千鶴の話についていけないあたしは一人置いてきぼりになる。
『いいの。いいの。今の話は気にしないで。それよりも、涼子ちゃんに遠征に行くって伝えなくちゃダメよ。二泊三日だから平日もお休みするのよ。』
『うん。帰りに言おうと思っていたんだ』
 千鶴はそうと頷くと、顧問の先生と打ち合せがあるそうなので、あたしは一人で涼子ちゃんを迎えにいくことになった。


 須藤涼子はあたしの同級生。今年の春から親しくなって、行き帰りのバスを一緒にしている。
 今日も、あたしは涼子ちゃんと帰るべく彼女が待つ手芸部に赴く。
 そもそも部活の長さ的にはあたしたちのほうが長くなってしまうが、涼子ちゃんはそれでもいいと待っていてくれる。
 それにしても涼子ちゃんと言えば、この前のお祭り、とても艶めかしいというか。

『女子バスケ部の小岩井センパイですか?』
 甘ったるい回想に浸っていたあたしをひとりの男子が呼び止めていた。あたし、にやけてなんかいなかったよね?
『そうよ。あなたは一年生?あたしに何かようかしら』
 見たところあたしの知っている顔ではなかった。
『僕は手芸部一年の神山っていいます。須藤センパイと待ち合わせしているんですよね?須藤センパイは部室にいますから。』
『ああ。そうなの。わざわざありがとう。』
『いえ、ちょうど下校するところだったので。それでは失礼します』
 親切な後輩がいるもんだなと思いながら、あたしは文化部の部室棟にむかった。


『遠征ですか?』
 彼女にそのことを話したのは、帰りのバスの中だった。
 もう夕日はとうに沈んでいた。日が短くなるのは早いものね。バス車内のわずかな光が涼子の頬を照らす。
『分かりました。じゃあ今週の金曜日は待ち合わせは無くていいんですね。』
『うん。っていうか涼子ちゃんいつも待っていたの?』
 寝坊を防止するために涼子ちゃんと登校するというのも、慣れてくるとそれすら遅刻してしまったり。
『気付かなかったの!?だって。うんん、なんでも無い。ああ。そろそろ、彩夏さん下りるところじゃないですか?』
 見るとあたしの家の最寄りの停留所が近づいていた。今日は何かと話を濁されるわ。
『大会頑張ってね。』
 そう言って見送ってくれる涼子ちゃんを背にあたしはバスを下りた。知らずあたしはもう一つの視線を受けながら。


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