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出会い
【ガールズ 恋愛小説】

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気付いた想い-1

 バスの窓から見える景色はけして珍しいものではなかった。街は違えどあるものは変わらない。
 現代文明の象徴とも言えるコンビニ。実際、それは全国どこも統一された形態をとっていた。ガソリンスタンドが見える。同じ顔をしたマンションが立ち並ぶ。いつも見ていた景色。それと何ら変わらない目の前に広がる景色。
 それでもあたしは見ずにはいられなかった。やることがない。話すことがない。もっともあたしは今、話なんかしたくなかった。
 だから、外を見ていた。ただ見ているだけ。そこに何の意味も無い。

 季節の移り変りは早い。窓の外には通りに並木が見える。その葉は既に色付き枯れ始めていた。焦燥するあたしの心を映すかのように。


『気付いた想い』


 あたし、小岩井彩夏。
 今日はバスケ部の県大会遠征があります。だから、気合いを入れて頑張らなくちゃいけないのに、今一つ身が締まらない。

『はぁ。』
 あたしはバスの中で深くため息をついた。少し肌寒い外の気温のせいで窓が曇る。しばらくするとそれは消える。
『何、ため息なんかついちゃっているのよ。涼子ちゃんに会えないからって落ち込まないでよ。たった一日でしょ?』
 あたしの隣の席からそう声がかけられる。彼女はあたしの同級生にしてバスケ部部長の相馬千鶴。
『あっ。あたしがいつ落ち込んでるっていうのよ。勘違いしないでよ。』
 千鶴の言葉を聞いてあたしの顔は熱くなる。あたしは軽く頬を膨らます仕草をした。
『やっ。嫌だなぁ。冗談だよ。冗談。』
 そう千鶴は笑顔で言う。
『そんな冗談言わないでよ』
 あたしは千鶴に聞こえないように一人愚痴ったつもりが、千鶴には何か聞こえてしまったみたい。
『彩夏。何か言った?』
 千鶴はそうあたしに聞き返した。
『何でもない。』
 そう言ってあたしは再び窓を見つめだした。千鶴はそんなあたしの様子をじっと見ていた。さっきまで冗談をいうように明るく笑っていた彼女も、今は真剣に何か考えているようだった。


 今日は遠征先近くの体育館を借りて、短時間の練習をすることになっていた。
 あたしは、試合のスタメンになっていたので千鶴と入念に動きの確認しながら試合形式で練習を始める。
 タイマーの電子音が体育館の中に鳴り響く。
 あたし達の掛け声が飛びかう。シューズが床を擦る音がいやに目立って聞こえる。
 千鶴は後方で味方のパスを受けとめる。二度、三度のドリブルの後、あたしにパスを渡す。それがさっきの打ち合せの流れだった。
『彩夏。もっと前攻めて』
 千鶴の声が聞こえあたしは慌てて飛んでいく。
 いつもなら気付くはずのボールも気付かずに、反応するのが遅れ、取りそこねそうになった。
 あたしはボールに引っ掛け、回転と速度を変えたところで改めて、ボールを受けとめる。
 そして二度ドリブルを踏み、あたしはレイアップでボールをリングへと運んだ。
 しかし、いつもは入るはずのボールはわずかに軌道がそれ床に落ちた。ほんのわずかの動揺があたしにさらなるミスを誘発させた。
 ベンチから声援の声がかかる。あたしは言われる迄もなくもう一度態勢を立て直しシュートを放った。
 今度は確実にリングに収まり。失敗をしてもすぐに立て直して得点したあたしに賛美の声が挙がる。
 それでもあたしの心は依然として晴れずだだ床に転がるボールをタイムアップの電子音が鳴り響く中見つめていた。


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