第六章 痴漢(画像付)-2
その時だった。
列車が交差する線路の下を通ると一瞬、暗くなりドアのガラスが鏡のように少女の顔を映した。
(おおっ・・・)
男の目が大きく広がったかと思うとすっーと細くなった。
アイドルのように美しい少女だった。
(こりゃあ、久しぶりの上物だぜ・・・)
女性専用車が登場するようになってから通勤の楽しみが減ったが、今日はついているらしい。
女はガードも甘く、睨み返す度胸もないようだ。
今日はとことん楽しんでやると男は心の中で舌なめずりしていた。
(い、いやぁ・・・)
圭子は漏らしそうになった悲鳴をかみ殺していた。
新聞の隙間からのぞかせる男の顔がドアのガラスに映ったのだ。
脂ぎった唇から覗かせた黄色い歯が竹内をイメージさせた。
おぞましさが全身を駆け巡る。
直ぐに明るくなった景色が眩しく、返って印象が強く脳裏に刻まれてしまった。
(た、助けてっ・・・)
まだ何をされた訳でも無いのだが、無意識に助けを求めて左右を見た。
しかし、乗客の殆ど全員が眠っているか本や携帯の画面に集中している。
そうでなければ、息苦しい環境を忘れる事など出来ないのだ。
おまけに耳にヘッドホンをつけているので、声を出して助けを呼んでも聞こえるとは思えない。
(へへへ・・・そうさ、誰も助けちゃくれないぜ)
男は悪役気取りで少女を見ている。
オドオドとした素振りは、まさにか弱い獲物そのものであった。
男は下半身を少女のお尻に押し付けるように身体を預けた。