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安倍川貴菜子の日常
【コメディ 恋愛小説】

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安倍川貴菜子の日常(4)-5

こうして貴菜子が護の仕事の手伝いをする事が決まった翌日。
護は昼休みに校舎の屋上の人目の付かない場所でエドを肩に乗せ会話をしていた。
昼休みとはいえ冬の屋上はかなり冷えるので人気は疎らであり、エドの様な使い魔は人に見つかると都合が悪いのでこの場所は護とエドにとって都合の良い場所なのである。
「さて、とりあえず安倍川が俺のアシストをするのが決まったけど何を手伝ってもらうかなぁ…」
貴菜子の扱いを考えているうちに難しい顔になった護はフェンスに寄りかかると腕を組み更に深く考え出したのだった。
「なあ、護。あの子はサンタの仕事についてずぶの素人なんだから、2〜3日くらい教本を読ませたらどうだ?」
「それは良いけどどこで教本を読ませるんだよ。教本を貸すのはおろか外で読ませるなんて出来ねーぞ」
エドの提案に護が顔を曇らせるとエドはニヤリと笑いながら耳元で囁いた。
「護の家でやればいーじゃんよ。別に家なら誰も来ないし個人レッスンにはもってこいだっつーの」
「安倍川を家に呼ぶのか!?そりゃダメだ!」
エドの提案に慌てる護にエドは追い討ちを掛けるのだった。
「じゃあ、護は他に妙案があるってのかい?あるんなら俺は聞くよ。サンタの仕事について何も知らない女の子を実地で手伝わせるなんて無謀な事は流石の護でもしねーよなぁ」
ニヤニヤしながら護の様子を伺うエドに護は苦虫を噛んだ様な表情になりながらもエドの提案を受け入れた。
勝ち誇った顔でいるエドに護は舌打ちをすると同時に、屋上のドアが開く音がしてこちらに足音が近付いてくるのに気付いたエドは急いで護の鞄に隠れた。
そして、護のところへ来たのは寒そうな表情で身体を縮こまらせた若菜だった。
「うう〜っ、寒いよぉ…。護くん、よく平気でこんな寒いところに居られるねぇ〜」
若菜は心底寒いのが苦手らしく護の目の前でガタガタ震えていた。
何の用事があって寒がりの若菜が屋上まで来たのか皆目見当の付かない護だったが、その姿があまりにも気の毒だったので鞄から保温ポットを取り出すと中に入っているコーヒーをカップ代わりの蓋に注ぎ若菜に差し出した。
「あ、ありがと〜、護くん。ああ、人の情けが身に沁みますぅ」
「ははっ、そんなバカな事言ってると圭吾みたいになるぞ」
護からカップを受け取った若菜は嬉しそうな顔をしたが護の余計な一言に反応した若菜は子供の様に拗ねてしまった。
「ひどいっ!いくら護くんでも私と兄さんを一緒にするなんてひどいよぉ」
「わ、悪かった。俺が悪かったよ。若菜のお願いを聞いてあげるから許してくれないか」
見事なまでの拗ねっぷりの若菜に護は下手に出て機嫌を取るのだった。
「じゃあ、今度の日曜日にお買い物に付き合って」
「えっ!?に、日曜か…」
「ダメなんて言わないよね、護くん……」
若菜の要求に一瞬答えを躊躇った護だったが、にこやかな表情の割にやたら気迫の篭ったオーラを背負う若菜に護はノーと言えずに日曜の約束を受けてしまったのだ。
手段はともあれ護から希望通りの回答を得た若菜はとびっきりの笑顔で「ありがとう、護くん。約束忘れちゃダメだからね」と言うと、先程貰ったコーヒーを飲み干しカップを護に返すと足取りも軽やかに屋上を後にしたのだった。


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