人のモノ-5
「で、でもいきなり…。それに私、川俣さんとお付き合いしてるし…」
もう言葉にしなくてもラブホテルに行く事は知っている様子だ。
「だから?」
「だから…って…」
「俺が朱莉ちゃんに興味を持った事と、彼氏がいる事は関係ないじゃん。」
「え?」
全く意味が分からなった。
「素敵な女子を見たら興味を持つ、それ、普通♪だって彼氏がいてもイケメンがいたら、興味持つでしょ?」
その時、食事中とかチラチラと見ていたことに気付かれていたんだと思った。
卑怯的に納得させられる言葉だった。
「川俣さんに朱莉ちゃんてどんな子だって色々説明されたけど、やっぱ実際に朱莉ちゃんと接しないと分からないしね。」
「…でも…」
「フフフ、俺がどこに行こうか、分かってるんでしょ?それが分かってて朱莉ちゃんは俺の車に乗った。もう言葉はいらないよ。」
「…」
言う通りであった。しかも下着まで変えて来た。朱莉は、やっぱりラブホテルに行くのはちょっと…と拒む気持ちよりも、なぜ下着まで変えたかと言う密かな願望に気持ちが寄って行く。運転する鉄平の横顔を見た瞬間、激しく胸がときめいた。
(今からこの人と…)
胸がドキドキする。鉄平と深い関係になりたがる自分に正直になって行く。
車がラブホテルの駐車場に停められた。
「じゃ♪」
朱莉はコクンと頷いた。車を降りると肩を抱き寄せられる。ドキっとした朱莉だが、すぐに鉄平に身を委ねる。
「どの部屋にする?」
「どこでも…」
「じゃあココね?」
「うん。」
部屋などどうでも良かった。頭の中はベッドの上でこれから行われる事でいっぱいだった。エレベーターを降りドアを開け部屋に入る朱莉は緊張しながらも足取りに戸惑いはなかった。中へ入りドアが閉まった瞬間、密室に鉄平と2人きりな状況に胸がドキドキした。
(今から色々話してからそう言う雰囲気になったら、始まっちゃうんだろうなぁ…。何話そう。緊張して上手く話せるかなぁ…)
不安を抱える朱莉だったが、今日に目の前に鉄平が来て体を寄せて来た。
「キャッ…」
驚いた朱莉だが、気付くともう唇が重なっていた。
「…!?」
体が固まる朱莉。目の前に胸をドキドキさせていたイケメンの顔が…。心臓が破裂しそうだった。そして巧みなキス。一瞬にして朱莉は骨抜きにされた。
(カッコいい…)
朱莉の体から変な力が抜けた。無意識に手を鉄平の体にソッと回していた朱莉であった。