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10年来の付き合いとは
【同性愛♂ 官能小説】

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10年来の付き合いとは。-2

夢か…
俺はよりにもよって、あんなありえない夢を見てしまった。
喉がカラカラだ。確か冷蔵庫に炭酸ソーダが…
と、考えたところで俺は天井が俺のアパートと全然違うことに気付いた。
左を向く。何だか豆だらけの男の黒い手が見える。
右を向く。髭面、デカいイビキ、そして獣のような汗の匂い…
俺の現在地、それは親方の腕の中だった。

俺は跳ね起きトイレへ向かった。

「ションベンは座ってしろ!」

注意書き通りに便座に座るが、俺の朝の元気なモノがはみ出てそれでは事を済ませられない。
壁に手を付き、便器に覆い被さる。

ケツが痛い。そして、俺のモノにはティッシュがついている。
…これって、そういうことだよな…
思い出せない。思い出したくない。
思い出したくない…?本当か?
俺は俺の気持ちにまた混乱し始めている。

「おう、起きたのか」

トイレを出ると、全裸の親方が立っていた。
…いろんな意味で立っていたので、俺は目を逸らした。

「お、おはようございます……」
「よく寝てたな」
「はい……。あの、俺、昨日どうしましたっけ?」
「あー、覚えてねぇのか。まあ、いいじゃねえか。」

良くはない。良くはないが、一旦ここは知らないままが良いのかもしれない。
俺は全く心の整理が付いていない。
それに、間違ってたらこの上なく恥ずかしい。
親方は俺の肩をポンと叩きトイレに入っていった。

そうだ、何もない。

親方は、酩酊した俺を心配して家には帰さず自分ちに泊めた。それだけだ。そう思う事にした。

「お前、無理矢理させるとめちゃくちゃ可愛い顔すんのな。思わず飲ませちまってごめんな。」

トイレ越しに、親方が言った。
…もう一度寝たら、この夢は覚めるだろうか。

数日間、俺の頭の中はその事でいっぱいだった。
だが結局、親方は今まで通りの厳しい頑固親父だった。
変わったのは俺だけ?
まだ、自分の気持ちを完全には受け入れられていない。

昼休憩、親方は元請けと話があると言ったので、後輩の運転で
コンビニへと向かった。

「先週、大丈夫でした?」
「だ、だ、大丈夫て?」
「え?二日酔い」

親方との話を聞かれているかと思い、俺は要らぬ動揺を見せた。

「…ああ、大丈夫。」
「いいっすよね。2人。なんで一緒に住まないんすか?」
「住む?誰と?」

俺がきょとんと後輩を見ると、後輩もまた俺を同じ表情で見返してきた。

「何言ってんすか。親方とですよ」
「え?え?いや、なんで?」
「だって、10年付き合ってんでしょ?」
「はぁぁぁあ???」

どっからそういう発想になるのだろう。
10年来の付き合いとは話していたが、それを恋愛的な意味だと
勘違いする程の馬鹿が居るとは思わなかった。

「あ、すいません、クローズドなんすか?
いや、あからさまだから隠してないのかと思って。
でも俺アライっすから。大丈夫っすよ」
「アライってなんだよ?」
「あー、バイの人って確かに用語疎いか。アライは、LGBTQに理解を示すストレートの事。」

後輩が、さも無知な人間に教えを施すかのように得意気に話すのに俺は腹を立てた。
しかもこいつ、ずっと俺をバイだと思っていたのか。
でも、なぜだ。
俺がそれに気付いたのはつい最近だというのに。

「正直、羨ましいっす。」

後輩は言った。

「10年も経ったら夫婦だってなぁなぁになるのに、先輩は恋する乙女みたいにいつも親方を見てるし、親方だって先輩の話する時、凄く嬉しそうで。
あー、俺もそのくらい愛してくれる良い女いねぇかなって思っちゃうんすよ」

馬鹿野郎。
それが本当なら、俺達の恋愛は始まったばかりだ。

親方は俺をどんな目で見ているんだろう。

確かめたくてウズウズして、休憩時間を早めるように俺は生姜焼き弁当をかっこんだ。


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