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俺が女に見える世界の話
【同性愛♂ 官能小説】

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俺が女に見える世界の話2-2

できて半年なのに、その店には意外に客が入っていた。
それも、お金持ちそうな人ばかり。
テレビで観たことのある俳優もその日は居て、常連客みたいだった。

そんな、女性には事欠かなさそうな顔ぶれなのに、俺が入った瞬間、皆が息を飲んだ。

「いいね、梶原さん」
「うん、良い」
「逸材じゃないか」

値踏みされるような目で見られて少し気分を害したが、咄嗟にコワモテおじさんこと梶原さんが笑顔で窘めてくれた。

「俺の大切なお客さんなんだから、そういうのはよしてくれよ」
「うん、すまんな、ついつい…」
「でも、とても美人だ…良ければ、俺達と一緒に呑んでくれませんか?」

店内は、昔のスパイ映画の隠し部屋のような、高級感がある内装だった。
黒と金のダマスク柄の壁、アンティークな本革のソファ、ミニバーとビリヤード台、man caveて言われる、男性の憧れが詰まっている部屋だ。
排他的な雰囲気、美女の俺が入ってはいけない気もするが、歳も熟年近い男達はすごく自然に俺を会話に入れてくる。
決して知識や性別、年齢で区別する事無く会話を楽しめる人達だった。
俺もこんな大人になりたいなと思わせてくる。

夜も更けていき、男達は一人一人と帰っていく。
そろそろ私も、と言っては見たが、最後に帰った叔父様が
「君はもうちょっとこの店を楽しんでおいで。じゃあまた会おう」
と言うので帰れなくなってしまった。

最初に居たバーテン役の人(実は客だった)に代わりお酒作りに徹していた梶原さんが、俺の隣にやってきた。
そして自然に俺の肩に手を回し、俺が避けないのを確認してからキスをしてきた。
あまりに普通にしてきたので拒む気も起きなかった。

「2ヶ月。大体そのくらいが今の目安なんだ。」

突然の話に俺が怪訝な顔をしても、梶原さんは笑みを崩さず、話を続ける。

「君、宮原くんの息子だろう?」
「え…?」

思ってもみない言葉だった。

「俺が…本当の俺が見えてるんですか?」
「いや、君は美人のままだよ。僕は、君が元の君から女性に変わった瞬間を知っている」
「いつ…?それは、いつなんですか?!」

梶原さんに初めてあったあの日の朝、俺がどこから女に見えるようになったのかはわからない。
前日、飲みすぎてしまって所々覚えてない。
朝も親父に会わずに出ていった。
俺が誰からも見えなくなる瞬間を思い出してみる。…分からない。

「前日の新宿方面ホームへ行く階段下のトイレ前」

梶原さんは言う。
確かにあそこは通路と垂直になっていて、都心でも夜は人どおりが多くはない駅だし、人が居なければ男女のトイレどちらから出てきたかは分からない。
でも一人二人はすれ違った気がする…
ふと、記憶の中の人間が浮かんだ。
ジャージ上下の男とすれ違った。梶原さんだ。

「それって、まさか…」
「そう、その通り」

俺を何らかの形で女性に見える様にした。
その犯人は梶原さんだったのだ。
色々聞きたい。その前に、先に聞きたいことがある。

「さっき、どうして俺が宮原だって、そして父の息子だって知ってるんですか?」
「もちろん知っているよ。古い知り合いでね」

俺は少しパニックになり、とりあえず梶原さんに見えないようにスマホを操作して親父にLINE通話をしようとする。

「別に君に危害を加えるわけじゃない。それに、宮原くんは梶原なんて人を知らないし、僕の顔を見たのは10年以上も前だから、覚えてないかもね」
「…貴方も俺みたいに…」
「いやいや、僕は年相応の男だよ。宮原くんとは仕事で電話やメールだけで長年取引があったんだ
…それで、なんで君が女性に見えるのか。ちゃんと説明してあげるよ」

梶原さんが俺にしたこと、それはやはり、あの日すれ違った時の薬物投与のせいだった。
最近はパッチ型の注射があると聞いていたが、俺がそれを使われるなんて思いもしなかった事だ。
その注射で身体が変質し、女性になっている、と梶原さんは言う。

「…ちょっと待ってください。俺は実際には変わってませんよね?」
「変わっているよ。君は実際に女性の身体だ」
「そんな!じゃあ俺が幻想を見ているってことですか?」
「そうだね。その薬に含有されているもう一つの成分、それが君の汗腺を変え、微量の匂いでも君の過去の自分を見せる麻薬みたいなものになっている」

俺は自分の胸に集中する。だが、いくら眺めても俺には男の胸にしか見えていない。

「…これは自然に解けるんですか?」
「さっき言った2ヶ月、その頃には作用が不安定になる。男性ホルモンが活発化するんだ。
活発化するような事をすれば更にその時期は早くなるよ」
「筋トレとか…」
「そう。それか、セックスとかだね」

梶原さんはこんな異常な話を、さも日常会話であるかのように穏やかに話す。
この人は、絶対に悪い人間だ。

「君が元に戻りたいなら、僕とセックスしてみるかい?」
「するわけないでしょう…」

俺はドアへ向かう。すぐに腕を掴まれる。突然、身体にゾクゾクとした感覚が走った。

「僕は女の君も、男の君も凄く好きだよ」
「俺に何したんですか…」
「君にこんな事をしたのに、僕が思い通りにしないとでも思った?」


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