彼の手の中<第三話>-4
「ちょっと!ダメだよ、寝てなきゃ」
「ごめんなさい」
「あ、家に連絡するからちょっと待ってて」
咲智が立ち上がろうとする。離れるのが寂しくてつい体を起こしかけると、咲智の両手がそれを制した。
「大人しくしろって言ってんの。殴るよ」
「ごめんなさい」
怖い…でも、幸せ。
俺が咲智の全てを愛しているように、咲智も俺の全てを受け入れてくれている。
俺は咲智を好きでいていいんだ。
「電話終わったよ」
咲智がベットの端に腰掛けた。手を伸ばすと、彼女は笑顔で握り返してくれた。
「もう少し寝なよ」
「うん」
俺は瞼を閉じる。
見るのはもちろん、咲智がいる幸せな夢。
寝ても覚めても、俺は咲智が好きだ。