先輩は僕のもの-8
「佐藤くんが、本間さんに乱暴な……酷いことしたって知っても……そんな扱いにさえ嫉妬するくらい、あなたのことが好きなの」
「中村さん」
理央は加奈子の背中に手を置く。
すべすべの汚れがないようなその肌を、汗ばんだ自分の手で汚してしまうことに、こんなにも興奮しているのに。
佳織を抱いたそのあとに、寝た女にはーーそんな感情を抱かなかった。
やはり、始めから特別だったのだ。
「僕と、付き合って。中村さんのこと独り占めしたい」
「いいの……?子持ちだし……経験も……そんなに…ないよ?亨くんが佐藤くん運んでくれた時、天下のヤリチンだから、起きたら気をつけてって……」
「ちょ、それ言う?!亨、ふざけんな!」
理央は笑って加奈子の体を抱きしめた。
そして頬を加奈子の頬に擦り寄せて、むにむにとした感触を楽しむ。
「天下のヤリチンが、中村さんのこと好きになっちゃったみたいなの。亨が名前呼んだだけで、あんな酷いことしちゃったんだよ。馬鹿でしょ。でも、もうしない。約束する」
「他の人とも……しない?」
「ーーこの一年、エッチしても意味無いってずーっと思ってたの。可愛い子としても、本間さんと比べちゃうんだもん。でも、中村さんは違うから」
二人の視線が重なる。
加奈子の目は艶っぽく、潤んでいて、理央の目は照れているのがわかる。
「僕、思ってたよりもずっと、中村さんが大好きみたい」
(四十前の男が言う言葉じゃないよな……マジで)
「ふふ、嬉しい」
加奈子はそう言いながら、理央の腕から抜け出すようにして、横たわったままの理央の頭を撫でる。
理央は、ロングヘアの隙間から覗く、細くて綺麗な裸体を見上げた。
そんな光景を見ながら頭を撫でられているのは、とても心地よかった。
「朝になったらお母さんにならなきゃだから。今日は、これ以上は許してね。本当はもっとくっついてたいけど。お休みの日は、子供との時間」
「んーーっ。さっき独り占めしたいって言ったばっかりなのにっ」
理央は駄々を捏ねる子供のように、加奈子の腰に抱きつく。
「やだ、柚木がもう一人増えたみたい。ーーでも、夜は、佐藤くんの時間でしょ?」
その言葉に、理央はにかっと笑う。
夜の甘い時間に思いを馳せてーー安心感からか理央に眠気が急に襲ってきて、目を閉じてそのまま眠ってしまった。