第六章 ギュッとしてくれた-1
第六章 ギュッとしてくれた
「んっ・・・・!」
「んっ・・・・?」
僕が差し出すラブレターを受け取りながらも、吉川さんはキョトンとした表情で言葉を返した。
シナリオとは違う展開に戸惑いながらも、僕は山田の作戦通りに振り向きざまダッシュする。
「ち、ちょっと・・・」
戸惑う吉川さんの声を聞きながら、僕は芝生に向かってダイビングした。
「い、いてぇっー・・・」
予行演習も空しく、僕は芝生の縁飾りに思いきり脛をぶつけた。
「だ、大丈夫・・・・?」
吉川さんが駆け寄り、心配そうに聞いてくる。
「・・・・」
余りの痛さに、暫らく声が出せなかった。
「本当に、大丈夫・・・・?」
彼女の息が、僕の首筋にかかる。
僕の胸の鼓動は破裂しそうに、ドクンドクンと高鳴っていた。
このまま気絶していたら、アニメのように看病してくれるだろうかと一瞬、思った。