特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』act.2-11
「美樹、証拠にコイツ等の前で…」
美樹の表情は一瞬にして固まり、色を無くしていく。
何度もセックスを重ねた相手なのに、美樹はどうしようも無い程うろたえていた。
何故か。そんなのは解りきっている。
大河内の節くれ立った手が太股を這い回る。今はブツブツと嫌悪感で皮膚が粟立つばかり。
自分の身体だけが、知っている。
偽りの自分のまま、ダッチワイフの様に心無いセックスは、幾ら強い快楽があるとは言え、美樹はもう、楽しい、とは言えないのだ。
すがる様に目線を送るが、あの憎たらしいキツネ目は少しも微動だにしない。さっきまで笑い合ってたのに…
美樹は悔しくて、苦しくて、切なくて、馬鹿みたいに涙が溢れた。
自慢じゃないが、自分の意思とは無関係に泣くなんて、美樹は子どもの頃以来だった。
「何よ、なんで全然糸目じゃないのよッ……馬鹿、大っ嫌い」
訳の解らない文句を言う美樹。自分でさえコントロール不能の美樹は、辺り構わずわめく。
「嫌いッ、大っ嫌いッ」
大河内の指がスカートに侵入する。
その時だった
『大河内先生、大河内先生。お電話が入っております。至急内線2番までご連絡下さい。繰り返します…』
「……残念。奇跡の救出だな、島原」
大河内はにやりと笑って美樹を開放した。スピーカーからは大河内を呼ぶ声が未だに響いている。
「ほら行けよ。もう二度と俺なんかに捕まるんじゃねーぞ」
大河内は三人の背中を軽く押して、化学室から追い出した。やかましかった放送の通りに電話を掛けると、大河内の予想通りの結果だった。
「さすがキツネ。食えない奴だねぇ」
くくくく…と笑う。
3年5組 6番 清水宏康
3年5組15番 西岡忍
3年5組32番 島原美樹
(まぁ、合格、にしてやるか)
プープープープー…と繋がらない受話器を片手に、大河内は仕方なく煙草を咥えた。
まだまだゲームは終わらねぇぜ。
残りは、九名だ――
《羞恥の箱》FIN