春の夜の回想-4
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あいかわらず渋滞が続いてる。夜がふけていくにつれ、街が一段とにぎわう。
その華やかな街の輝きが、時々にじんだ。
(あのケーキ、どうなったんだろ?)
(あの男のことだから、食べたのかな?)
(写真だけ撮って、棄てただろうな……)
あの次の日、私はママとスポンジケーキの土台にホイップクリームを盛り上げ、色とりどりのグミを並べてバースデーケーキをこしらえた。
ママはホワイトチョコのプレートにチョコペンで、
「かま弥 おめでとう!」と書いてくれた。
そう、私の名前は「かま弥」……。「タバ子」でも「ウン子」でもない。でも私、もしかしたらあの名前で呼ばれることで、ママをサポートできてたのかも知れない。
車が少し進んだところで、ママが言った。
「この華やかな街の裏に、いろんなものがうずくまっとるんやなぁ……」
「そうやね……」
経験者の私は、感じとっていた。
この街にひそむ「夜の子どもハウス」を。
そこにも「タバ子ちゃん」や「ウン子ちゃん」のような、不本意な立場を与えられた子たちがいることを。
私は心の中で、その子たちに向けて叫んだ。
「あなたたちに、決してバチは当たらないからね!」
【おしまい】