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こいびとは小学2年生
【ロリ 官能小説】

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Drive on Saturday-1


 JRの高架線下を抜け、やたらと駐車場が広いドラッグストアの角で左折して、片側二車線のまっすぐな国道に出る。カーシェアで借りてきたセルリアンブルーマイカのミラージュのアクセルをぐいん、と 、速度制限ぎりぎりまで踏み込む。そのタイミングでカーオーディオに繋がれている俺のウォークマンからJuice=Juiceの「DOWN TOWN」が流れ出すと助手席のしのちゃんが

「いえーい!」

と拳を上げた。シュガーベイブのバージョンしか知らない、と言うさおりさんも後部座席でニコニコだ。午前十時の国道を西へ向かって走るフロントガラスは視界良好、すれ違うXSR900のライダーがなぜかミラージュにサムアップしてくる。みんなご機嫌なんだな、天気もいいし。
 次の土曜日は喫茶店が水道工事で丸一日臨時休業になる、と先週さおりさんから聞かされた俺は、じゃあ三人でドライブに行きませんか、と提案した。俺もちょうどシフトの休みだったし、しのちゃんも土曜日は小学校が休みだ。それにしても俺が小学生の頃はまだ土曜日授業ってあったんだよな、いつぐらいから週五になったんだろ。
 「DOWN TOWN」のサビをしのちゃんとさおりさんがいっしょに歌う。同じフレーズの繰り返しを、途中からしのちゃんがわざと調子っぱずれに歌って、さおりさんがたまらずに吹き出す。

「ねーお兄ちゃん、『栗だぞー』ってなんで?秋だから?」

「しの、そこは『くり出そう』でしょ」

 バックミラーに映るさおりさんが、まるで子供のように笑いながらツッコミを入れる。きょとん、とした顔のしのちゃんが、昨日までの仕事の疲労がすっ飛ぶほどにかわいい。

「ねー、なんでママもお兄ちゃんも笑ってるの、ひどーい」

 そう言ってしのちゃんはコンソールトレイのカップホルダに置いておいたプリングスを取り、サワークリーム&オニオンのチップスを三枚くらい重ねてばりばりとかじった。右手に持った緑色の容器で俺の肘をこんこん、とつっつく。あの、しのちゃん俺運転中なんですけれど。
 カーナビは電車なら一時間くらいの距離にあるアウトレットに設定してあって、そこでしのちゃんとさおりさんが新しい服を探すのが一応の目的だ。三人で獅子神山へハイキングに行く予定は雨で流れ、三人でミラパークに行く予定はしのちゃんが風邪をひいてこれも流れた。どっちも仕方ないのだけれど、秋後半の行楽シーズンは搭乗客も増えるから俺のシフトは土日出勤がメインになる。数少ない土曜日のシフト休みと臨時休業が重なったのはまさに僥倖で、とにかく三人で一日ずっといっしょに過ごそう、というのが今日の実質的な目的だ。
 大好きな音楽を聴きながらドライブができる、と聞いたときのしのちゃんの反応は、まだ平熱まで戻っていなかったにも関わらずハイテンションだった。あ、むしろ熱があったからハイテンションだったのかな。

「お兄ちゃん、次ダンシング・ヒーローがいい」

 しのちゃんがプリングルスの筒で俺の左側頭部をこんこん、と叩き、どう聞いてもたしなめているように聞こえないさおりさんの、しの、よしなさい、という声がそれに重なる。もう苦笑いするしかなく、ちょうど赤信号で止まったタイミングで選曲して、カーオーディオのヴォリュームをふたつ分くらい上げる。キレのいい打ち込みのイントロがスタートし荻野目洋子が歌い出すと、俺は後部座席を振り向いた。

「これ最初に流行った頃さおりさん何歳でした?しのちゃんくらい?」

「生まれてないわよっ」

 仕返し成功。きゃははー、と上がるしのちゃんの笑い声にかぶせて、ほら、信号変わったわよ、と、さおりさんが大げさに顎をしゃくりながら言う。お二人もさっきのライダーに負けず劣らずご機嫌でなにより。
 バブリーダンスからNiziU、乃木坂、松たか子(レリゴーだ)、さおりさんのリクエストでBUMP OF CHICKEN、と、母子カラオケ大会を存分に満喫すると、ミラージュはちょっと長めの橋を渡ってアウトレットモールの敷地に入っていった。空港のエプロンくらいの広さがある駐車場はすでに半分くらい埋まっている。アウトレットモールとはいえ、フードコートや独立した飲食店それに生活雑貨の店やゲームセンターまで入居しているのでショッピングモールのような役割も果たしている。空港の格納庫よりでかいメインの建物が目に入った瞬間からテンションが爆上がりしていたしのちゃんが、ミラージュから降りるやいなや大好きなALGYのロゴめがけてダッシュしていく。それを半ば息を切らせて追いかける26歳と31歳。EASTBOYのベストを着たマネキンのショーウインドウの前でやっとしのちゃんをつかまえたさおりさんが追いついた俺を振り向いて笑いながら、

「手を繋いでないとしのどっか行っちゃうね。お兄ちゃんよろしく」

と言ってしのちゃんの右手を俺にあずけた。ちょっとドギマギしながらしのちゃんの手を握る。俺の左手を握って照れくさそうに笑うしのちゃんの頭をさおりさんが撫でる。さおりさん、どっちの意味で俺としのちゃんの手を繋がせたんだろう。保護者として面倒見てね、の意味なのか、それとも「こいびと」として仲良くしてなさい、なのか。


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