面接-6
数日後、朝のミーティングで鉄平の処遇について発表した。
「先日面接に来た神谷鉄平さんですが、採用は見送りにする事に決めました。」
これに殆どの女子社員がブーイングする。
「えー!?」
「何でですかー!?」
「採用しましょうよー!」
怖いぐらいの反響の大きさに驚く都姫。
(そんなムキになるっ!?)
多少がっかりする程度ですむと思っていた都姫だったが、予想を遥かに上回るブーイングに少し焦った。
「もー!イケメンに惑わされすぎっ!!もう決めたから。不採用です!分かった!!」
普段怒らない都姫が怒りを露わにしたことに静まり返る社員達。さすがにもう調子に乗らない方がいいかなと空気を読んだ。
「では今週は新店舗のオープンがあります。時間を無駄にせずしっかり仕事して下さい。以上。」
そう不機嫌そうな様子でCEO室に戻ってしまった。
「あー、イケメンとの夢のオフィスが…」
「もう会えないのかなぁ…」
「あー、このオフィスにいいオトコが欲しいなぁ。」
「ねぇ夕梨花さん、彼の番号教えてください!」
「そ、そんな事できないわよ…。男性なら井上君がいるでしょ…?」
1番後の隅っこにいた唯一の男性社員の井上彰に全員の視線が集まる。
「…!?」
肩を窄める井上彰。
「超草食系じゃあねぇ…」
「全然トキメキませーん!」
普段からあまり男性として意識もしていない井上にトキメキを求める者はいなかった。特にイジメたり意地悪してる者はいないが、良く言えばみんなのフォロー、悪く言えば使いっパの井上は肩身の狭い思いをしながらも、ネット通販のパソコン業務を担当している。
「とにかく、CEOがそう言う判断をしたので諦めて!」
結局夕梨花までブーイングを受けた。
(完全に私までみんなの敵じゃない…。私だって採用賛成派なのに…)
立場上都姫の決定を支持するしかなかった。
(私なんかこれから断りの電話入れなきゃなんないのに…)
そう、嫌な役割が待っていた。夕梨花はCEO室に入り、これから鉄平に断りの電話を入れる報告をして人事室に入り電話を入れる。
「あ、神谷さんですか?私、フェミニンマインドの音泉です。先日はご足労いただきありがとうございました。」
「いいえ、こちらこそ面接、ありがとうございました。」
「それでですね、神谷さんの採用に関して色々協議したのですが、今回は残念ながら見送らさせていただく事になりました…」
「えー!?不採用ですか!?」
「残念ながら…」
「俺、フェミニンマインドで働きたいんです!面接の日からずっとフェミニンマインドで働く事ばかり考えてたんですよー。もう一回考え直してくださいよー。」
「いや、そう言われましても…」
「CEOさんと話をさせて下さいよ!」
「いや、CEOは今席を外してまして…」
「じゃあ何時頃戻って来ますか?」
「えっと…、ちょっと伺ってなくて…ごめんなさい。」
「じゃあ今から行きますから!」
「いや、それは困ります…」
なこなか引き下がらない鉄平に困りながら、夕梨花は強引に話に幕引きして電話を切った。
「ふぅぅ。」
また電話が来ないか、事務所に来ないかヒヤヒヤしながら1日の業務を終えた。外出から戻った都姫に報告する。
「そう、結構ねばられたのね。ゴメンね?お疲れさま。」
夕梨花を労って退社する麻衣子を見送ったのであった。