突然の劣情-7
「ぼ、僕…リビングで寝る……から。リビングにあったひざかけと、座布団、借ります」
理央は起き上がり、寝室から出て、トイレへとかけこむ。
「どーすんだよ、これ……」
スエットをおろし、洋式便器に腰をおろす。
赤黒く腫れ、血管が幾筋も浮き出た肉棒の先端にある亀頭からは、だらだらと先走りが流れ出てしまっている。
(中村さんの舌……すごい、気持ちよかった……真面目そうな中村さんが、あんな舌使い……)
思い出して、かぁあっと顔が熱くなる。
最低だと思いつつ、これを鎮めないとおそらく事態は変わらない。
先程の行為を思い出し、そしてその先を妄想しながら、理央は自らを鎮めたのだった。
*
「さとーくんっ。おきてーっ」
むにむに、と頬をつつかれる感覚。
「ん……」
理央はリビングのカーペットの上で、座布団を枕にしてひざかけをかけて眠ってしまっていた。
手元にあるスマートフォンで時刻を確認すると、九時前。
結構ぐっすり眠ってしまっていたらしい。
目の前には柚木がにこにこしながら座っていて、理央が起きたのを確認すると、ごろんとその隣に横たわり、理央の体を抱きしめる。
「何で途中で、ここで寝ちゃったの?狭かった?」
「ううん、言ったでしょ?お母さんは、結婚した男の人としか一緒に寝られないから、お母さんがお布団で寝る時に移動したの」
「そっかあ、佐藤くんは約束を守る男なんだ」
「はは」
(ギリ、危なかったけど……)
そんなことを思っていると、黒のタートルネックに、黒のロングスカートを履いて、既にメイクを施している加奈子にキッチンから話しかけられた。
「佐藤くんは朝ごはん、食べる人?ご飯よそうだけなんだけど」
「あ、いいんすか」
むくり、と起き上がり、ひざかけを畳む。
「じゃあ一緒に食べちゃいましょう。洗面所にタオル置いてあるから顔、洗っておいで」
食事をとりおえた後、柚木は友達の家に遊びに行くのだと言って、十時前頃には出かけて行った。
理央は、昨夜使わせてもらった使い捨ての歯ブラシで歯を磨いたあと、リビングのテーブルで、スエット姿のままコーヒーを飲んでいた。
「色々してもらって、すみません」
「いえ、とんでもない」
洗い物を終えた加奈子が、コーヒーを持ってきて、理央の右隣に座る。
どきん、と理央の胸が高鳴る。
「昨日は……気を使わせちゃったよね、ごめんなさい……。ひどいことした、佐藤くんの気持ちとか、横にいる柚木のこと考えずに……」
「何で。失礼な言い方になるかもしれないけれど、多分ずっと仕事してて、彼氏とかいなければ寂しい時だってあるじゃないですか。でも僕は、僕が中村さんと変なことして、柚木くんに嫌な思いさせたくなかったから。我慢できて良かった」
ふふっ、と理央は笑った。