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『鬼と、罪深き花畜』
【SM 官能小説】

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『鬼と、罪深き花畜』-7

「へへっ。恥ずかしがる歳でもあるまいに。そうだな、二時間もすりゃ一段落するだろうから。おまえも後でアトリエに来るがいい」
 先生は奥さんにそう言ってから、池の反対側に建っているオープンデッキの付いている離れの建物に向かいました。庭に面した一面が総ガラス張りで、アトリエの中の様子がそっくり見えていました。画材やキャンバスが山のように乱雑に積んでありました。
 庭を見渡せるアトリエに入るとすぐに先生は僕に女になれと言ったのです。高校のトイレの中のような嫌らしいことはしない約束だったのに。
「先生、それじゃ約束が違うじゃないですか」
 僕は真っ赤に顔を火照らせながら抗議しました。
「勘違いするな。俺のモデルになるだけだ。おまえの本当の姿を見せろと言ったんだ」
「本当の姿って」
「だから、最高の女になれってことだ」
 先生は僕の本当の姿は女だと言うんです。訳の分からないことを言うことが多い黒岩先生です。でもザワザワと胸騒ぎがしていました。
「どういう意味ですか」
「おまえはこのままでも十分に美しい。だがな、おまえの男の髪型だけはどうにも我慢出来ねえんだ。これを被ってみろ」
 先生は僕の胸に長い黒髪のウィッグを投げつけてきたんです。
「これを被るんですか」
「そうだ。あそこの鏡の前で、女になれ」
 アトリエの隅っこに簡素な化粧台がありました。モデルさんが化粧するためにいつも置かれているのでしょう。
 僕は長い黒髪を垂らした女性の姿に化身すると想像しただけで、胸のザワつきが治まらなくなっていました。
「やっぱり、先生は変なことをするんですね」
 僕は半ば不貞腐れたような口調で言い返しました。先生の凶暴な恐ろしさを身に沁みて分かっている僕は拒絶出来ないと思いつつ、照れ隠しに反抗してみせたのです。
「おまえって奴は……往復ビンタされないと、俺の言いなりにはなれないのか」
 先生はすぐにヤクザのような凄みを利かせて、睨みつけてくるんです。
「嫌です。あんな非道いビンタは絶対に嫌っ」
「じゃあ、さっさと裸になって、そのカツラを被るんだ」
「えっ……は、裸なんて……聞いてません」
 裸になれと言われて、僕の胸騒ぎは頂点に達していました。
「モデルが裸にならないでどうするんだ。あったり前のことだろが」
 先生は当然のことのように言うんです。
 昨日の夜から恐れていた通りです。僕は素っ裸に剥かれて卑猥なことをされるかもしれないのです。僕はブルブルッと身震いしながら、それでも口唇を噛みしめ、長袖のTシャツを脱いで、ジーンズのパンツを下ろしたんです。トランクス一枚の格好になりました。
 総ガラス張りのアトリエは庭から丸見えです。母屋からも丸見えのはずです。あの上品そうな奥さんに僕の裸を覗かれるかもしれないと思うと、恥ずかしくてなりません。
「そんな目で見ないで……」
 高校生男子としては小柄な僕です。体重は47kgでウェストは45センチしかない痩せっぽっちの身体に劣等感を少しだけ抱いてます。こんなモヤシのような僕の裸を描きたいという黒岩先生の真意もよく分かりません。
「ははっ、馬鹿な奴だな。絵描きがモデルの身体を見ないでどうするんだ。そんな野暮ったいパンツなんか脱いで、これを付けろ」
 先生が手にしていたのは、桜の花ビラが舞っている薄墨色の和装用の腰巻でした。股間を覆うことだけは許してもらえそうで、ちょっとは安堵したんです。
「着替えますから、見ないで」
 トランクスを脱いで大急ぎで腰巻をクビれた腰に巻き付けたのですが、困ったことに僕の股間の肉茎はカチカチに勃っていました。薄墨色の腰巻の前をモコッと突き上げていたんです。
「ガハッ。童貞チンポが頑張りやがって、折角の美少女モデルが台無しだ」
 美少女モデルと言われて、なんだか凄く変な気分でした。


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